第15話 初めてのキス

森の中にあるミカリス達の小屋に戻ってきた。

応接間でミカリスとニキアが向かい合い座っている。

ニキアの横にはリリシアが座りうつむいている。

セイ、レイク、モモはドア付近で立ち、ただ見守っている。


「さて、話を聞こうかニキア。どうしてリリシアをさらったんだ。」

「違うんです。お兄様。ニキア様は襲われそうになった私を

助けてくれたんです。」とリリシアが訴えた。


「実はお兄さん。わが父の指示でリリシアは命を狙われていました。

それを知った僕はずっとリリシアを助けようと彼女を探していました。」


「どうして?リリシアちゃんは何も悪い事をしていないのに。

なぜ命を狙われるの?」私は思わず問いかけた。


「モモ、リリシアの能力は敵国にとって脅威なんだ。」

ミカリスは悲しげな表情で話を続けた。

「リリシア自体は敵国を滅ぼそうなどと悪意はないんだ。

だが、何か危険が起きるなど突発的に力を発してしまう。」


震えるリリシアをニキアが優しく肩を抱いた。


「ミロ、その力は制御できないの?」

「モモ、制御と言うか力が出なくなる方法はあるよ。」

「どうすれば?」

「本当に愛する者同士で結ばれると力が無くなるらしい。」

とミロは言った。


「リリシアちゃんとニキアさんが結婚すればいいじゃない。」

私が言うとリリシアは真っ赤になった。

ニキアが目をキラキラさせ「僕はいつでも大丈夫です。」

と上機嫌だ。


「モモ、そう簡単には、、、お互い種族も違う。どうしたものか。」


セイもレイクも黙って聞いているが、驚きで何度か口を押え下を向いている。


「今のままだと、またリリシアが狙われるかもしれない。」

「ねぇ、ミロ。ニキアさんの国の王様はリリシアちゃんの力を

恐れているのよね。だったら解決策があるよ。」


ニキアの国へ行って、私が特殊な治癒魔法を使えると説明し、

リリシアが脅威でない事を証明したいと提案した。

ミロはかなり反対したが、ニキアがついているし大丈夫だと

必死で説得した。


明日、ニキアと私はルトネルド王国に行くことにした。


「ミロ、私、頑張るね。」

「モモ、君に危険な事をさせるのは本当は嫌で心配なんだ。」


「それより、ミロ。私がいなくなってうちのお母さんがどう思っているか。」

「ああ、それなら大丈夫。君がこちらに来た日、斎藤さんに頼んで問題ないことを

伝えてもらっているよ。」

「奈良でお会いした斎藤さんね。それなら安心した。さすがだわ、ミロ。」

どのように説明しているのか少し気になるけど、うちのお母さんなら

大丈夫かなとなぜか思った。


「お兄様。モモ様とニキア様に私もご一緒します。」

「リリシアはダメだよ。ここで待つんだ。」


「リリシア。僕を信じて。モモさんは僕が責任をもって

守るし危険な目に合わせないよ。」ニキアが言った。

その時のニキアはとても凛々しくカッコ良かった。

ミロほどではないけれどイケメンで惚れ惚れする。


「モモ様。私のせいで申し訳ありません。」とリリシアが私の手を取った。

可愛い。私が男なら一瞬で好きになるに違いない。

「リリシアちゃん。モモ様じゃなくモモちゃんでいいよ。」

「え、でも、、、では、モモ、、ちゃん。」

きゃ~可愛い。私は思わず抱きしめていた。



夕食をすませ、私はミロとバルコニーで空を眺めていた。

ミロが真横にいて、今、彼を独り占めしていることが幸せだ。

月と星とミロが美しすぎる。


「モモ、明日は一緒に行けなくてゴメン。本当は側にいて守りたい。

けど、剣士が急に出向くと戦いになりかねない。」

「第一王子のニキアが一緒なんだし、大丈夫だよ。私はニキアを助けた

聖女様だよ。」って冗談っぽく笑ってみせた。

「そうだね。モモは聖女様だね。」ミロも微笑みながら私に言った。


ミロが私を心配そうに見つめている。

彼の瞳を見ると吸い込まれそうになり目が離せない。

ミロの手が私の頬に触れ、彼の顔が近づいてくる。

私は目を閉じ初めてのキスをした。

嬉しいのに心臓がバクバクしすぎる。恥ずかしい。

明日から、どんな顔をしたらいいのだろうか。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る