第12話 王子と少女

ニキアは今、最高潮に幸せな毎日である。

愛するリリシアがずっと側にいる。


リリシアも初めのうちは囚われの身で戸惑っていたが、

ニキアが自分を大切に思ってくれている事を感じ、

嫌な気分ではなかった。

むしろ、居心地が良くニキアとの何気ない会話を楽しく思っている。


「おはよう、リリシア。今日もすごく可愛い。」


「ニキア様。そういうのは、もういいです。」

と言いながらクスクス笑っている。


「それはそうと、朝食にしましょう。」


今日は天気も良く、外に出て食べる事にした。

家の外にある木造の長椅子に並んで座っている。


リリシアが作ってくれた野菜スープは絶品だ。

ニキアはスープを飲みパンを食べ喜びをかみしめている。

城にいた頃の料理の方が豪華だが、リリシアの作ってくれた物が

一番美味しい。


「リリシア。君は料理の天才だよ。こんな美味しいスープ初めてだ。」

とニキアは嬉しすぎて涙目だ。


「ニキア様は大袈裟です。お城ではもっとイイ物を食べていたはずよ。」

とプンっと口を尖らせている。


あ~~、可愛い。リリシア。

ニキアは胸の高鳴りを抑えるのに必死だ。

結婚相手は彼女以外には考えられないが、今は我慢しなければ。

手を出してはいけない。

それに、あまりジッと見続けるとリリシアが恥ずかしがるので

チラチラ横目で見ている。


最近、リリシアは僕が見つめると頬を赤らめる時がある。

もしかして、彼女も僕の事を意識してくれているのだろうか?

いやいや、それはないか。どうなんだろう?

と自問自答を繰り返している。


「ねぇ、ニキア様。あなたは第一王子でしょ。いなくなって心配されているはずよ。

それに、ここも見つからないかしら?」


「僕がいなくなったって誰も気にもとめていないよ。第四王子までいるし、

かわりはいるんだ。」

とニキアは少し寂しげな表情で話した。


「ここは僕が結界をはっているし当分は大丈夫だよ。

それに君の事は全力で守るから。」

リリシアの手を強く握った。


「ニキア様。ありがとうございます。ちょっと近いです。」

「あ、ゴメン。」とニキアは手をはなし照れながら下を向いた。


リリシアはニキアに近づかれたり手を握ったりされると

ボーっとしてしまいドキドキする。

どうしてしまったのだろう。

このまま一緒にいていいのだろうかと思い悩んだ。


お互い黙ったままボンヤリと前の景色を見ていると

急に弓矢が飛んできた。


「危ない!!」

ニキアがリリシアをかばい左腕に矢が刺さった。


「きゃぁー、ニキア様、、、」

リリシアは驚き体が動かない。


ニキアはすぐに矢を抜き、弓を打ってきた男に飛び掛かり

一発で打ちのめした。


「リリシア、大丈夫かい?」

「ニキア様こそ、腕から血が、、、」


「君が無事で良かった。これくらい、かすり傷だよ。」


その時、倒れていたはずの男が立ち上がり短剣を持って

リリシアとニキアに向かってきた。


「やめてーーー。」

リリシアは叫び、それと同時に辺り一帯に青い光が放たれた。


ニキアと男が黒い鳥(カラス)の姿になり倒れこんでいる。


「ニキア様、ニキア様。」

鳥の姿のニキアに覆いかぶさり泣き叫ぶことしかできないリリシアだった。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る