第8話 囚われた少女
長い銀髪の美しい少女が目を覚ました。
「ここは?」
小さな窓から暖かい日差しが入り、心地よいベッドから体を起こした。
「目を覚ましたかい?リリシア。」
と輝く黒髪で、茶色がかった切れ長の瞳を持つ青年が声をかけた。
「あなたは誰なの?」
「僕はルトネルド王国の第一王子、ニキア・フェルマレス。」
少女は驚き、そして緑の綺麗な瞳から今にも涙がこぼれ落ちそうだ。
「怖がらせてしまってゴメン。ずっと探していたんだ。君に会いたくて。」
とニキアは言う。
「え?私、あなたを知らない。」
とリリシアが言うと
「僕だよ。青い花が咲く丘で可愛い小鳥ちゃんと言ってくれたよね。一緒に遊んだよね。」
と恥ずかしそうに訴える第一王子。
「ああ、あの時の。急に来なくなったから心配していたのよ。」
今から8年前、ニキアが11歳。
隣国が気になり、怖いもの見たさで鳥の姿になって訪れたのだ。
ニキアの国は鳥の姿に変身できる鳥化人だ。
鳥と言っても、日本ではカラスと言われる種類でちょっと厄介ものの扱いだが。
しかし、この地では黒い羽が光り輝き、クチバシは黄金色でカッコイイ。
ニキアがブルギスト王国にこっそり入り、可愛らしい声で鼻歌を歌う少女を見つけた。
『なんて綺麗な女の子なんだ。』
ニキアはすぐに心を奪われた。
一目惚れだった。
「まぁ、可愛らしい小鳥ちゃん。黒い羽がとても綺麗ね。」
リリシアが鳥化したニキアに声をかけた。
それから、毎日のように言葉を交わす事はないけれど、ほんのひと時を一緒に過ごした。
ニキアは、リリシアの歌が好きだった。
第一王子として厳しく育てられ、優しい言葉をかけてくれる人は誰もいなかった。
初めて人から温かく接してもらえた。
「羽が綺麗ね。」
「飛ぶ姿がカッコイイ。」
「目が輝いて宝石のよう。」
「お利口さん。」と色々と褒めてくれた。
誰かに認められるのは、こんなにも嬉しいものだと初めて知った。
ニキアが冷酷な王子にならなかったのは、リリシアのお陰だと言ってもいい。
ニキアとリリシアの穏やかなひと時は長くは続かなかった。
リリシアが黒い鳥と一緒にいるところを世話係に見られ、追い払われた。
ニキアもまた、隣国へ行っていた事がばれてしまい国王にかなり叱責され、
しばらく監禁されてしまったのだ。
「リリシア。君のチカラのせいで、わが国に狙われているのは知っているよね?僕は君を守りたい。」
「ニキア様。なぜ?」
「僕はずっと君のことを想っていた。結婚してほしい。」
「えっと、、、急に言われても。ちょっと無理かも、、、。」
リリシアは突然の告白に驚いたし、この王子は立場とかどういうつもりなのか
心配になった。
見た目はすごくカッコイイけど、軽はずみすぎて残念な人すぎる。
あまりのショックなのかニキアが呆然としている。
「ニキア様。あの小鳥ちゃんに会えなくなった時はとても寂しかったわ。
でも、結婚とかは、、、。まだ、あなたの事をよく知らないし。」
「では、これから僕をもっと知ってほしい。君を誰より大事に思っている。」
とニキアが真剣な眼差しで見つめてくる。
嘘ではないのだろうが、やはり戸惑ってしまう。
それにしても、ニキア様は美しい瞳をしているなとリリシアは思った。
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