第6話 いざ奈良へ
「ミロ、電車に乗って奈良に行こう。」
「電車か。初めて乗るよ。」
初めてと言われ、何だか嬉しくなった。
とりあえず、ミロはキャリーリュックに入ってもらった。
阪神御影から尼崎で降り、近鉄奈良行きに乗り換えた。
山陽姫路から近鉄奈良まで、山陽、阪神、近鉄と電車が乗り入れしているので奈良まで行きやすい。
今日は比較的すいていて、電車の連結部分側の端に座りリュックは大事に
膝上に抱えた。
ハガキの住所をGoogleマップで調べてみたが、土地勘がないのでピンとこない。
まぁ、行ってから考えればいいやと楽観的に旅気分にひたる事にした。
乗客が、大きなリュックをチラチラと見てくる。
猫を連れて電車に乗ってる人、珍しいもんね。
ミロ、窮屈じゃないかなと思い覗き込むと目をつぶっていた。
疲れたのかな?
奈良駅に着いて、まず外国人が多いのに驚いた。
さすが観光地だな。
ミロとゆっくり観光したいのはやまやまだけど、それどころではないんだと反省した。
ふとミロをみると、どことなく不安げな表情をしているように見える。
「ミロ、大丈夫。きっと見つかるから。」と言葉をかけると
「うん」と首を振って答えてくれた。
Googleマップの案内だと、目的地まで徒歩15分と表示されている。
知らない所だし30分はかかりそう。
駅員さんに出口を教えてもらい、携帯を見ながら斎藤家へ向かった。
地下の改札を出て階段を上がると、前方右に商店街がある。
商店街はとても賑わっている。
和菓子屋さんや飲食店や雑貨店さんなど。
一つ目の商店街を抜けると、左前方に人だかりが、、、
おもに外国人が携帯を手に撮影待ちモードだ。
『あれは、もしやあの有名な高速餅つきのパフォーマンス!』
よくテレビで男性2人が超高速で餅つきをしている姿を紹介している。
もうすぐ始まるのかな?
まだ餅つきは始まっていなかったが、お腹がすいたのでお餅を1つ買って歩きながら食べた。
『美味しい。』
きなこ付きの柔らかいお餅の中にあんこが入っている。
普段、あまり和菓子を食べないけれど癖になりそうだ。
帰り、お母さんにも買ってかえろう。
ミロには家からの持参したゼリー状のオヤツをあげた。
あとで、ゆっくりとお昼ご飯を食べたいな。
その前に、斉藤家だ。
高速餅つきのお店を通り過ぎると
すぐ右手に商店街がある。
次は、その商店街を通るようだ。
商店街脇の路地を見ると、そこにも飲食店などお店があるようで人々が歩いている。
この辺りは『ならまち』というようで、
蚊帳の布巾屋さんや漢方薬屋さんや靴下屋さんなど、古民家風の雰囲気があるお店がたくさんある。
素敵な街並みだ。
次回はゆっくり見てみたい。
ほどなくして住宅地に入った頃には人も少なくなり、ミロをリュックから出してあげた。
「狭かったでしょ?ゴメンね。」
「いや、女の子に運んでもらい悪かった。重たかっただろ。大丈夫か?」
ミロは普段ツンとしているが優しい。
守ってあげたいのに、守られている。
目的地に向かっていると、急に空気が変わった気がした。
背中から誰かに押されているような感覚がする。
「あ、あれが斎藤家だ!」と私が言った途端、ミロは走り出し家の中に消えていった。
「ミロー、待ってー。」
私も走っていき、空いた玄関を勝手に入っていった。
「え、誰?」
そこには、銀髪で緑の瞳をもつ美しい青年が剣を持ち立っていた。
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