第5話 妹の行き先
木造の門が少しあいていて、こっそり覗くと70代くらいの女性が庭の花に
水をまいていた。
「あの、すいません。山代さんから聞いて尋ねてきました。以前住んでいた斉藤さんが何処に引っ越したか知りませんか?」
顔をあげた女性は、「あら」と驚いたが初対面の私を自宅に通してくれた。
畳に絨毯を敷き、上等そうなソファがある部屋に通された。
ちょっと気まずそうな私に
「斉藤さんよね。リリちゃんという猫を飼ってた。」
リリちゃん、、、ミロの妹よね。名前も可愛い。
「あの、どんな猫ちゃんですか?」
と引っ越し先を聞く事以上に気になり尋ねてしまった。
「お嬢さんの猫ちゃんと同じ色合いで、毛の長い可愛い猫ちゃんよ。」
グレーのモフモフ。可愛いーー。
「孫がリリちゃんとよく遊んでいてね。引っ越す時は寂しがっていたわ。」
「引っ越し先は、ご存知ですか?」
ちょっと待ってね、と女性は部屋を出た。
すぐに戻ってきて、手にはお寺か何かの写真の絵ハガキを持っていた。
先月、斉藤さんが引っ越し先から送ってきてくれたそうだ。
初対面なのに簡単にハガキを見せてくれた事に驚いたが、斉藤さんからシルバーの猫を連れた人が尋ねてきたら、新しい住まいを知らせてほしいと頼まれていたらしい。
ハガキをくれた加賀屋さんにお礼を言い、早々に家を出た。
斉藤さんの新しい住所。それは奈良県。今の時間は午前10時半。
奈良は小学生の遠足以来だ。電車で1時間半くらいで行けるはず。
「ミロ、今から奈良に行くよ!」
「分かった。」
ミロのグリーンがかった瞳がキラキラしていて見入ってしまった。
『なんて綺麗な瞳なんだろう。』
ミロと目が合った時、頬が熱くなった。
真っ赤になった自分が恥ずかしくなり目をそらしてしまった。
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