第2話

「ご注文おうかがいいたします。」

「ブラックコーヒーをひとつ。」

翌日、より詳しく話を聞くことにした私は、近くのカフェで依頼人である桃子を待っていた。


「すみません!お待たせしました。」

少し遅れて到着した桃子が小走りでこちらへ向かってきた。

「いえ、お気になさらず。何か頼まれますか?」

「じゃあ、カフェラテを。」

店員に軽く会釈をし、視線を桃子へと戻す。


「では早速ですが、お母さまとはご実家で2人暮らしを?」

「はい、5年前に父が亡くなってからは母と2人で暮らしていました。あ、あと猫のごまと。」

「そうですか、一緒に暮らしていてお母さまが誰かに恨まれているかもという心当たりは?」

「ありません。母は優しくて穏やかな人でしたから…探偵さんは母が怨恨で殺されたと?」

私の言葉に桃子の顔にほのかな怒りの色が見える。

「可能性としてはないことではありませんから。念のため。桃子さんはやはり強盗殺人だと?」

「えぇ、まぁ。現に部屋が荒らされていたわけですし…ただ犯人の手掛かりが何もないから探偵さんに依頼した訳で…」

「そうですね。では依頼に戻りましょうか。」


あくまで桃子の依頼とは猫のごまを探すことなのだ。

「猫ちゃんの行きそうな場所や、お母さまの他に懐いていた人などはご存じですか?」

「それが、母がいたころはずっと家で寝ていましたし、母以外に懐いているところを見たことはないんです。」

「なるほど、ではこれはどうでしょう。猫ちゃんは犯行現場に居合わせ、犯人につながる何らかの証拠が付着してしまった…とか」

「だから猫を連れ去った…?殺されていても不思議じゃないんじゃ、相手は強盗殺人犯ですよ?!」

「落ち着いてください。ではなぜお母さまの遺体はそのまま残されていたのに猫ちゃんは存在そのものがまるっきり消えてしまったんでしょう?不思議ではありませんか?」

「確かに…そうかもしれませんね。」

「犯人は何か理由があって猫を殺すことはできず、連れ去った。そして今もそばに猫がいる可能性が高い。」

「じゃあやっぱり、ごまの行方を追えば犯人が見つかるんでしょうか?」

「ただの仮説にすぎませんが…何の手掛かりもない今、猫ちゃんに賭けてみるしかありませんね。」

「わかりました。よろしくお願いします。」

「ではまず、ご自宅まで案内していただけますか?」

「自宅ですか?」

「えぇ、警察が再三調べつくしたとは思いますが念のため。それと近くで猫ちゃんの目撃情報があるか聞いてみましょう。」

「わかりました。ご案内します。」

2人は店を出ると、桜井家へと車を走らせた。






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