第9話 2回戦

さて、俺たちは選手控室に戻った。


そこには、負けたトーマスがいた。


「俺はお前たちに負けたとは思っていねえぞ。

 俺はまだ戦えたんだ!」


おいおい、負け犬の遠吠えも甚だしいな。


「お前の命がいくつあったって俺を倒すことはできんよ。」


「くそ!

 せこい能力使いやがって!

 そのスライムが無けりゃ何もできないだろうが!」


「それはお互い様だろう?

 お前だって、そのスキルが無きゃ死んでんだぜ?」


「ぐぬぬぬ・・・。」


俺たちが言い争っていると、1人の美少女が割って入ってきた。


「あんたたち!

 ちょっと静かにできないわけ!?

 あたしたちはね、次の試合に向けて集中してんの!

 邪魔しないでくれるかしら!ふんっ!」


おー怖い怖い。


いるよね、こういう女子。


『ちょっと男子たち!いい加減にしてよね!』


って突然キレだすんだ。


「あいつ、勇者だぜ。」


すると、トーマスがそう言った。


勇者だと!?


あの金髪美少女が!?


「マジかよ。勇者ってホントにいたんだな!」


勇者の存在は知ってはいた。


でも、まさか同学年で入試を受けているとは知らなんだ。


「魔王が復活したらしく、それに呼応するように勇者が誕生したらしいんだ。」


「お前、詳しいな。」


「バカ言うんじゃねえ。常識だよ、常識!

 お前、さては友達いねえな?

 はっはっはっ!」


くそ、こいつ、何気に図星を突いてくる。


「うるせえな。次の試合だろ、お前。

 さっさとあっち行け!」


「へいへい。」


そう言うと、トーマスは去って行った。


さて、そう言う俺も、そろそろ次の試合だ。


ちょうど司会から声がかかった。


「次はジェラルド選手、ツグク選手です。

 アリーナ内に進んでください。」


ジェラルドか。


特に声はかけられなかったが、あいつかな。


なんだかキザっぽいやつだ。


理屈でねちねち詰めてきそうなタイプ。


俺にちょっと似てるかも。


すると、司会が戦いの始まりの口上を述べる。


「さあ、お次はジェラルド対ツグク!

 試合はどうなるかな!?

 レディーファイト!!!」


ゴングが鳴った。


いよいよ開戦だ!


ジェラルドは何の構えもしない。


妙だな・・・。


まあいい。何もしてこないなら、スライムパンチをお見舞いするだけさ。


俺はジェラルドに向かって突っ込んだ!


「スライムパンチ!!!」


ガギーーーン!


なんと!


俺のパンチを受け流しやがった!!!


どういうことだ!?


「おいムイラ!

 ちゃんと殴ったよな?」


「うん、父さん!

 でも、硬い何かに阻まれた。

 あれはいったい・・・。」


すると、ジェラルドは不敵な笑みを浮かべる。


「ふふふふ・・・。

 不思議だろう?

 自慢のパンチを阻まれた気分はどうだ?」


今度はジェラルドから仕掛けてきた!


「シールドバッシュ!!!」


ドゴっ!!!


俺はジェラルドのパンチをうまく受けた!


が、そのあまりの威力に地面に足が突き刺さる。


なんて威力なんだ・・・!


しかし、ヒントをつかんだ。


ジェラルドは技名を叫んだ。


『シールドバッシュ』と。


こいつのスキルは「盾」に違いない。


俺のパンチを受け流すほどの防御力、どう崩したものか・・・。


完璧なスキルなどそう無い。


なにか穴があるはず・・・。


盾と言えば、一方向にしか向けられない。


たぶんだが、ジェラルドの背後にはやつの盾は出現しないはずだ。


俺はムイラに耳打ちした。


「ムイラ。パンチの瞬間、やつの背後を狙ってくれ!

 背後にはやつのスキルは及んでいないはずだ。」


「わかった、父さん!」


よし、作戦開始!


俺はがむしゃらに攻撃するふりをした。


「うおおおおお!!!」


「スライムパンチ!!!

 スライムパンチ!!!

 スライムパンチ!!!

 スライムパンチ!!!」


ガギーーーン!


ジェラルドはすべてのパンチを盾ではじく。


「ふはははは!

 どうした!その程度か!」


そして、俺の次のパンチの瞬間、ムイラはスライムのムチに変化した!


そのままムチはジェラルドの背後に届き、バチンっ!と命中した!


ジェラルドは一瞬で気絶した。


「おーーーっと!

 ジェラルド選手、気絶!

 よって、ツグク選手の勝利ーーー!」


「ヒューーーーヒューーーーー!!!」


ふう。遠隔技を訓練しといてよかったぜ。


こうして、2戦目も難なく突破した。


そして、選手控室に戻った。


すると、気絶したジェラルドが運ばれてきた。


「ジェラルド!大丈夫!?」


ジェラルドに声をかける人物が1人。


それはなんと、あの勇者だった・・・。


すると、ジェラルドは少し意識を取り戻した様子。


「すみません・・・勇者の盾ともあろう者が・・・不覚を取りました・・・。」


勇者の盾?


「そんなことはいいの!とにかく無事でいて!」


そうして、ジェラルドは医務室へ運ばれていった。


すると、勇者が俺のもとへやってきた。


「あなた!

 よくも私のジェラルドをやってくれたわね!

 覚悟しなさい!」


「覚悟も何も、あんたとは戦わないだろ?」


「いいえ!次の対戦相手はこのあたし、クリスタルよ!」


うっそーーーーん!!!



==== 作者あとがき ====


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