第8話 初戦

さて、俺たちは既に試合会場の選手控室にいる。


初戦はトーマスだ。


胴着を着ている。


武闘系の戦い方をするのだろう。


それは好都合。


俺たちは肉弾戦が得意なのだ。


「よお、あんたがツグクかい?

 随分とヒョロガリだねえ。

 スキル頼りの雑魚と見た。

 へへっ!」


ずいぶんと腹の立つヤロウだな。


スキル頼りの雑魚ってのは正直図星だ。


スキルが無きゃ、ムイラがいなきゃ俺はただの雑魚だ。


でも、それがどうした。


俺にはムイラが付いている。


ムイラあっての俺なんだ。


俺は強い!


こんなやつの挑発に載ってたまるか!


俺は奴の挑発にのるまいと答えた。


「ふん。勝手に言っていればいいさ。」


すると、司会が声をかける。


「次はトーマス選手、ツグク選手です。

 アリーナ内に進んでください。」


いよいよだ。


俺はより一層気を引き締め、司会の案内のもとアリーナ内に足を踏み入れた。


「わーーー!!!」


歓声が響き渡る。


アリーナは円状になっており、その円の中心で試合が行われる。


円の外側はすべて観客で埋め尽くされている。


入学試験とはいえ、将来有望な選手たちが戦うのだ。


観客たちはそれを楽しまんとしている。


まったく、観客たちは気楽でいいね。


俺たちが必死に戦っているのを見て楽しんでいやがる。


すると、司会が戦いの始まりの口上を述べる。


「さあ、お次はトーマス対ツグク!

 試合はどうなるかな!?

 レディーファイト!!!」


ゴングが鳴った。


いよいよ開戦だ!


トーマスは戦闘の構えをとっている。


が、攻めてくる気配はない。


俺から攻めるしかなさそうだな。


そんな逃げ腰では、1発で終わっちまうぞ?トーマス。


俺は攻めの姿勢に入り、トーマス目掛けてダッシュした。


すると、トーマスもそれにこたえるようにダッシュする。


なんだこいつ。


攻めには攻めってか?


命知らずなやつだな。


そして、俺はスライムパンチを繰り出した。


「スライムパンチ!!!」


ムイラのチカラも加わった強力なパンチだ。


そして・・・。


ボガーーーーン!!!


スライムパンチはトーマスの顔面にクリーンヒットした!


すると、チカラの加減をしたはずなのに、トーマスの顔面は吹き飛んでしまった!!!


ぶしゃああああああ!!!


首からは血が噴き出す。


「おい、ムイラ!

 力加減はどうした!」


「父さん、ごめんなさい。

 あいつが向かってくる力によって、力が倍増してしまったみたい・・・。」


なるほど。作用反作用の法則か・・・。


止まっている相手よりも、向かってくる相手に与えるパンチのほうが威力が増してしまうのだ。


そこの計算を誤ってしまったようだ・・・。


「起こってしまったことは仕方ない・・・。

 俺たちは殺人を犯した。

 まあ、契約書には死ぬ場合もあることにサインしているから、俺たちが捕まることはないが、供養しよう。」


俺たちは手を合わせた。


司会も驚いた様子だが、司会は司会をつづけた。


「おーっと!

 殺してしまったようです!

 よって、ツグク選手、しっかーく!!!

 って、あれれれれ???」


司会がさらに驚いた様子だ。


それも無理はない。


だって、死んだはずのトーマスが生き返っているのだから!!!


「ふっ。俺はな、死なないんだよ。

 俺のスキルは『残機』。

 一定時間ごとに命の数が増える。

 つまり、おれにはまだ残機が残っているんだよ!」


司会が驚き、タイムを取る。


「ターーーーイム!!!

 ルールを確認します。

 トーマス選手が負けになるのか、ツグク選手の失格はなしになるのか、はたまた、試合続行なのか決めます!」


そうして、司会は試験官と何やら会話する。


そして、結論が出たらしい。


司会が口を開く。


「議論の結果、ツグク選手の勝利となりました!!!

 トーマス選手は一定時間の気絶状態だったため負け、ツグク選手は殺人を犯していないので勝ちとします!!!」


「ヒューヒュー!!!」


司会の言葉で会場が沸いた。


良かった・・・あわや失格だったぜ・・・。


「良かった!父さん!!!」


「ああ。結果オーライだ!」


かくして、俺とムイラは勝利を勝ち取ったのだった。


次は第2回戦だ!



==== 作者あとがき ====


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