第7話 トレーニング
入学試験は1か月後。
俺はムイラを身にまとい、稽古に出た。
稽古と言っても、対人戦はできない。
だから、3メートル級の大きな岩を相手にしてみることにした。
俺は深く腰を落とし、深呼吸する。
そして、両手のこぶしを強く握りこむ。
右手を引き、振りかぶる。
そのまま、強烈な右ストレートを巨石に叩き込んだ!
バゴーーーーン!!!
巨石は粉々に砕け散った・・・。
おいおい、こりゃあ本気出して殴ったら、人を殺しかねないな。
たぶん、本気で人を殴ったら、そいつは複雑骨折し、身体は50メートルほど吹き飛ぶだろう。
即死だ。
「ムイラ。入学試験では殺しは禁止されている。
殺さない程度の力加減にしろよ。」
「うん、父さん!
ってか、父さんのひげジョリジョリ。
もっとちゃんと剃ってよね!」
ムイラは俺の全身をまとっている。ひげ部分も例外ではない。
「はは。気を付けるよ。」
こんな強力なチカラを持っているのに、会話はただの親子。
俺は思わず笑ってしまった。
「さて、パワー面は全く問題ないな。
むしろ強すぎて心配なくらいだ。」
「えへへ。」
ムイラは褒められて嬉しそうにする。
「あとはちょっとした小技をためしたいな。
例えば、俺が右手を銃の形にしたら、スライム状の液体を高速で飛ばすとか!」
「できるよ!
でも、その分魔力は多少消費するから注意してね!」
「オーケー!
じゃあ早速やってみよう!」
俺はそう言うと、右手を銃の形にして、「バーン!」とやってみた。
すると、目にもとまらぬ速さでスライム状の液体が飛んだ!
ヒューーーン!!!
ドスッ!!!
岩を見事に貫通した!
やべえって。
これも人を殺しかねないな。
「これも威力が高すぎる。
入学試験では火力調節を頼むぞ、ムイラ!」
「えへへ。わかったよ、父さん!」
訓練を続ければ続けるほど、ムイラのヤバさを肌で感じた。
だって、こいつの殺しの方法、無限大過ぎるだろ!
スライムってすごいいろんな戦闘方法に融通が利くんだよなあ。
俺は感心した。
「あとは、スライム状の身体をムチみたいに伸ばして、攻撃できるか?
遠距離技は複数持っておきたい。」
「できるよ、父さん!」
そう言うと、俺は右手を振りかぶり、ムチを打つ時のようなスナップを効かせた動作をした。
すると。
バチンっ!!!
岩が粉砕された・・・。
これも人を殺しかねない。
「これもだ。これも火力調整を頼む!」
「はいよー、父さん!」
こうして、俺たちの訓練初日は終えた。
俺たちは家に帰った。
「いやあ、ムイラはすごいよ。
スライムパンチに、スライムガン、それにスライムムチまでできちまう。
もはや隙なしだね。
これなら大抵の相手に勝てるだろう!」
「もうあなたったら、親ばかなんだから!」
「いやあ。親ばかじゃないさ。
客観的に見てもムイラは強すぎる!
自慢の娘だ!」
「もう父さん!恥ずかしいって!もう褒めるの禁止!!!」
「はははは!すまんすまん。
あまりにムイラが強くてな、興奮してしまったよ。」
「ほら!また褒めた!!!」
なんて幸せなんだろう。
この能力を教えてくれたライムに感謝を。
この能力を使わせてくれるムイラに感謝を。
こうして、俺たちは1か月もの間、家族で出かけたり、訓練をしたりと過ごしていった。
そして、入学試験当日・・・。
俺はムイラと会場に向かっていた。
ライムは残念ながら家でお留守番。
スライムの格好では外に出せないから、仕方ない。
俺たちの勇姿を見せたかったんだがな・・・。
「父さん、いよいよだね!」
「ああ。力はほどほどにな。
しっかりと調節するんだぞ!」
「うん、任せてよ、父さん!」
会場に着くと、さっそく、試合の組み合わせ表が掲載されていた。
ふむふむ。
初戦はトーマスという男らしい。
いやあ、最強の娘を従えているとはいえ、緊張するなぁ。
試合なんてしたことないし。
元スキル無しの俺にとって、スキル持ちを相手にするとか、夢にも思わなかったんだ。
スキル無しとスキル持ちとの間にはそれほどに大きな壁があるのだ。
このとき、俺たちは予想もしなかった。
まさか本当に人を殺すことになるなんて・・・。
==== 作者あとがき ====
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