第4話 ムイラの変貌
「なんだよクソオヤジ!
こっち見んじゃねえ!」
俺は耳を疑った。
ムイラが・・・あんなにかわいくて、従順だった俺の愛娘が、そんな汚い言葉遣いをするなんて!
「ムイラ、どうした?
俺のかわいいムイラ・・・。」
俺はあたふたした。
仕方ないだろう。
目を覚ます前、ついさっきまであんなに父親思いだったムイラが、こんな暴言を吐くわけがない。
「うるせえな、クソジジイ!
気やすく私の名前を呼ぶんじゃねえ!」
間違いない。ムイラは、俺のかわいいムイラはもういない。
なんてことだ。
これが反抗期というやつだろうか。
こんなの俺は耐えられないよ・・・。
たった半日の成長でこんなに変わるなんて、思いもよらなかった。
人間はもっと成長に時間がかかるんだから、驚くのも当然。
「ムイラ、父さんにそんな言葉使ったら、父さん傷つくぞ。
ライムも何とか言ってやってくれ。」
しかし、ライムはうつむいたまま首を横に振った。
ライムもお手上げの様子。
まいったな。
「ふん、勝手に言ってろ。
私はこの家から出ていく!
こんな狭い家、もううんざりだね!」
そう言うと、ムイラは家を飛び出してしまった。
おいおい、超スライムのお前が外に出ては一大事だぞ!
「ライム、お前はここにいろ。
俺がムイラを連れ帰る!」
俺はムイラのあとを追い、家を飛び出した。
ムイラは一度も家の外に出たことがない。
いったい、どこへ向かうというんだ!?
家を出たって、行く当てもないだろうに・・・。
「ムイラー!ムイラー!」
俺は全力で叫ぶが、何も返答はない。
これはまいったなあ。
俺はムイラを見失ってしまった。
手掛かりは何もない。
たぶん、超スライムのスーパーダッシュだ。
普通の人間には目にもとまらぬ速さ。
俺が追いつけるわけもないな。
俺はいったん家に帰った。
ライムはうつむき、しくしくと泣いている。
俺はライムの肩にそっと手をやる。
「ライム、きっとムイラは反抗期ってやつだ。
時間が解決するさ。
それに、魔力がつきたら、俺のもとに戻らざるを得ないだろう?
待っていれば、きっとそのうちひょこっと戻ってくるさ。」
俺はライムを慰めるつもりでそう言った。
しかし。
「あなたが気絶している間にね、少しあの子と話したの。
家を出ていくって言っててね、魔力が尽きたら私はそこで死ぬとまで言ってたのよ。
本当に、この家が、この家族が嫌で嫌で仕方ないみたいなの・・・。
ううう・・・。」
マジかよ。
それじゃあ、外で野垂れ死ぬつもりかよ。
父さん、そんなことは許さんぞ!
「ライム。
ムイラが向かいそうな場所に心当たりはないか?
ムイラは生まれてこの方、家の外に出たことが無い。
きっと、なにか行く当てがあって出ていったんだ。」
すると、ライムは少しの間考え、何かひらめいた様子だ。
「そうだわ、あなたが私に求愛した場所のことを話したことがある!
そこには他のスライムもいっぱいいるって話したから、そこに向かったのかもしれないわ!」
それだ!
俺は急いで村の外の、ライムを捕まえた場所に向かった。
すると、その周辺にはなにやら兵士たちが構えていて物騒だ。
俺は兵士に尋ねた。
「何事ですか?」
「いやあ、俺たちにもよくわからないんですけどね。
スライムの大群が発生したみたいなんです。
スライムは群れる習性などないはずなんですけどねえ。」
まさか、ムイラの仕業じゃなかろうな・・・。
俺は嫌な予感がした。
すると、ゴゴゴゴゴゴゴ、と地鳴りがした。
なんだ?
音は段々と近づいてくる。
兵士たちは臨戦態勢に入る。
「なにか来るぞー、構えろー!!!」
すると、本当にスライムの大群が現れたではないか!
ゴゴゴゴゴゴゴ!!!
スライムの大群は兵士たちを飲み込む。
「うわああああ!!!」
よくよく見ると、大群の先頭でスライムたちを指揮しているのはライムではないか!
「おい、ライム!
なんてことをしている!
すぐにこっちへ来い!」
ライムは俺の存在に気付くも、無視する。
なんてことだ・・・人間たちをこんなに襲って、ただじゃ済まないぞ!
すると、兵士たちの増援が来た!
そして、スライム軍団は兵士たちにより次々となぎ倒されていく!
バサッ!バギッ!
俺は必死にそれを止める。
だって、たぶんこいつら、ムイラの仲間だろう?
娘の仲間がみすみす殺されるのを見たくないんだ。
「待ってくれ、兵士さんたち!
このスライムたちにもきっと、なにか訳があるんだ!」
「スライムだぞ!
こんな低能な魔物にワケなどあるものか!」
俺はそれでも兵士を止める。
「待ってくれ、兵士さーん!!!」
「ええい!うるさいやつだ!
貴様は反逆罪により、ここで処す!!!」
バサッ!!!
俺は兵士に切り倒された・・・。
==== 作者あとがき ====
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