第7話:冒険者ギルドへの登録
商業ギルドを後にして、俺は次なる目的地である冒険者ギルドに向かうことにした。商人としての第一歩を踏み出した今、冒険者としての活動も並行して行うのがこの異世界で生き抜くためには必要だと感じている。
イストリアの街は相変わらず活気に満ちており、商人や冒険者たちが行き交う通りを歩くたびに、異世界の空気を肌で感じる。
俺の足元では、ルナが静かに歩いている。彼女もまた、この街の喧騒に慣れてきたのか、警戒心を保ちながらも、リラックスした様子だ。
「さて、冒険者ギルドはどこだったかな……」
街を歩きながら、周囲の建物や看板に目を配る。冒険者ギルドは街の中心部にあると聞いていたが、思った以上にこの街は広い。
しばらく歩くと、ようやく見覚えのある冒険者ギルドの看板が見えた。大きな木製の扉がギルドの入口を示しており、その前には剣や鎧を装備した冒険者たちが集まっている。
「ここだな、冒険者ギルド……」
俺は冒険者ギルド「イストリア支部」を見上げ、少し緊張した。異世界に転生して数日が経ち、ようやく一歩踏み出す決心を固めた。
ギルドの建物は立派な石造りで、城郭のような重厚感が漂っている。玄関の扉は開け放たれており、その中からは多くの人々が行き交う様子が見て取れた。
中へと足を踏み入れると、ギルド内の雰囲気に圧倒された。広々としたホールには大きな掲示板があり、そこに貼られた無数の依頼書が冒険者たちの目を引いている。
様々な装備を身にまとった冒険者たちが掲示板の前で相談したり、真剣な顔つきで次の仕事を探している。
「さて、まずは登録だな……」
俺はルナを連れて、冒険者ギルドのカウンターへと進んだ。ギルド内は活気に満ちており、様々な装備をした冒険者たちが談笑しながら、依頼や報酬のやり取りをしていた。
ルナはいつものように冷静で、異世界の混沌とした空気の中でも動じることはない。
カウンターには若い女性が数人並び、次々に訪れる冒険者たちに対応している。俺はその列に並び、順番を待つことにした。
「次の方、どうぞ」
ようやく俺の順番が来た。カウンターの女性はにこやかな笑顔で、名前が「リリーナ」と書かれた名札をつけていた。
「新規登録をお願いしたいんですが、俺と一緒に、このルナの獣魔登録もお願いできますか?」
リリーナは微笑みながら頷いた。
「獣魔登録ですね。もちろんです。最近は獣魔や魔獣をパートナーにして活動される冒険者の方も多いので、全く問題ありません。まずはタケル様の冒険者登録から進めさせていただきますね」
彼女は登録用の用紙を差し出してくれた。名前、年齢、出身地といった基本的な情報を記入する欄があり、俺は「タケル・ミナミ」と書き込み、その他の必要事項も順番に埋めていった。
「これで大丈夫ですか?」
「はい、それでは、次にこちらの魔石に手を置いてください」
リリーナが差し出したのは、青く光る魔石だ。俺はその魔石に手を置くと、手のひらにひんやりとした感覚が広がり、魔石が淡く輝いた。これで登録が完了するらしい。
「これでタケル様の冒険者登録が完了しました。冒険者証となるバッジをお渡ししますね。タケル様はEランクの冒険者としてスタートです」
彼女が手渡してくれたのは、シンプルな金属製のバッジだ。バッジにはEランクを示す模様が刻まれている。
「冒険者ギルドのランクは、EからSまでの6段階で区分されています。タケル様はまずEランクからのスタートとなりますが、実績を積めば昇格も可能です。依頼は、あちらの掲示板からお選びください」
ホールの中央に設置された大きな掲示板には、無数の依頼が並んでいた。冒険者たちが群がり、次々に依頼を選んでいる。
「なるほど、依頼をこなしてランクを上げていくってわけか」
「その通りです。Eランクの方でも安全な依頼が多数ありますので、まずは無理のない範囲でお試しください」
「ありがとう、早速見てみるよ」
「では、次にルナ様の獣魔登録を進めさせていただきますね。こちらの用紙に彼女の情報をご記入ください」
俺はルナの名前や性別、種別を記入し、再び魔石にルナを触れさせた。魔石が再び光り、彼女の獣魔としての登録も完了した。
「ルナ様も正式に登録されました。こちらが彼女の獣魔の印です」
リリーナは、ルナ用の小さな金属製のバッジ――「獣魔の印」を手渡してくれた。バッジには、獣魔であることを示すシンボルが刻まれており、冒険者のパートナーであることを示していた。
「これでルナ様も冒険者ギルドに正式に登録され、彼女の実績もタケル様の冒険者活動に反映されます」
ルナはバッジを受け取ると、軽く尻尾を振って俺を見上げた。彼女もこの新しいステップにやる気を感じているようだ。
「ありがとう、これでルナも一緒に活動できるんだな」
ルナは軽く尻尾を振りながら俺を見上げている。どうやら彼女もやる気は十分のようだ。
「さて、次は依頼だな」
俺はルナと共に掲示板に向かい、そこに貼られている依頼を見て回った。討伐、護衛、採取など、内容は多岐にわたるが、初心者のEランク冒険者が受けられる依頼は限られている。
「まずは簡単なものから始めるか……」
目に留まったのは「薬草の採取」という依頼だった。指定された森で薬草を集めてくるという簡単な内容で、報酬は30クラウン。初心者にとってはちょうどいい依頼だ。
「よし、これにしよう」
俺はその依頼書を手に取り、再びカウンターへ戻った。
「この薬草採取の依頼を受けたいんだけど」
「承知しました。こちらが採取場所を示した地図です。指定された場所で薬草を集め、持ち帰っていただければ報酬が支払われます。安全な依頼ではありますが、油断せずに挑んでくださいね」
リリーナは微笑みながら、俺に地図を手渡してくれた。俺はそれを受け取り、感謝の言葉を述べた後、ルナと共にギルドを後にした。
「さあ、行こうかルナ。初仕事だ」
ギルドを出てすぐ、俺はルナに声をかけた。彼女はしっぽを振りながら、俺の隣を歩いている。地図によれば、薬草が採れる場所は町の外れにある「ミストフォレスト」という森だ。
冒険者たちの話を聞く限り、比較的安全な場所らしいが、何が起こるかはわからない。慎重に行動するに越したことはない。
「森っていっても、見た感じそこまで危険じゃなさそうだな」
町を抜け、少し歩くと、目の前に広がるのは美しい森の景色だった。木々は青々と茂り、鳥のさえずりが風に乗って聞こえてくる。ミストフォレストと呼ばれるだけあって、森の奥からは薄い霧が立ちこめているが、それでも道筋は明確に見える。
「ルナ、気をつけて進むぞ」
彼女は軽く頷きながら、鋭い目つきで周囲を警戒している。異世界に転生してから、彼女は確かに魔獣としての力を手に入れたが、その鋭敏な感覚は昔から変わらない。俺の守護者として、彼女は何も見逃さない。
道なりに進んでいくと、指定された場所に到着した。地図によれば、この辺りで薬草が採れるはずだ。俺は周囲を見渡しながら、地面に目を向けた。
「これか……?」
すぐに目に留まったのは、小さな青い花を咲かせた植物だった。地図に描かれている薬草と一致している。俺はしゃがみ込み、慎重にその薬草を摘み取った。
「思ったより簡単に見つかるな……でも、油断は禁物か」
その瞬間、頭の中に何かが閃いた。摘み取った薬草を見つめていると、視界に突然、文字が浮かび上がってきたのだ。
【薬草:ヒーリンググラス】
「なんだ、これ……?」
驚きつつも、俺は別の植物にも目を向けた。少し違う形の葉を持つ植物だ。再び視界に文字が現れる。
【薬草:ポイズンリーフ】
「これは……もしかして、鑑定スキルか?」
俺はしばらく呆然としながらも、思わず笑みがこぼれた。異世界に転生したばかりで、まさかスキルを得るとは思ってもいなかった。俺が手に入れたこの「鑑定スキル」は、今後の冒険や商売にも大いに役立つだろう。
「これで薬草を簡単に見分けられるな」
ルナも不思議そうに俺を見つめているが、彼女は何が起こったか察しているのか、軽く吠えて応えた。
「よし、これなら作業が早く終わりそうだ」
俺はさらに周囲の薬草を摘み取り、次々に鑑定していった。鑑定スキルのおかげで、効率よく薬草を集めることができた。予定よりも早く作業を終えた俺たちは、さっそくギルドに戻ることにした。
ギルドに戻った俺は、集めた薬草を受付に提出した。
「お疲れ様です、タケル様。薬草の採取、ご苦労様でした」
受付のリリーナはにこやかに薬草を確認し、報酬を手渡してくれた。
「こちらが報酬の30クラウンです。また次の依頼もお待ちしておりますので、引き続きよろしくお願いしますね」
30クラウンを受け取ると、その硬貨の重みが現実のものとして感じられた。初仕事を無事に終えたという達成感が、少しだけ俺を誇らしくさせた。
「ありがとう、次もよろしく頼むよ」
俺は軽く頭を下げ、ルナと共にギルドを後にした。これが異世界での初仕事だ。鑑定スキルという思わぬ力も手に入れ、俺は少しずつこの世界での冒険者としての道を歩み始めた。
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