第12話
「…それでどうなんですか?」
「え?」
「これで俺のことわかってくれたかと思います。だから期限付きで付き合ってみませんか?」
「そ、それは…」
「期限付きであっても付き合うからにはちゃんと尽くします。香坂さんには悪い話ではないと思うのですが」
確かに条件だけで見れば完璧で私の理想そのものだ。
でも、天城さんと付き合うなんて想像もつかない。
別に好きでもないし、恋愛対象ですらもなかった相手だから…
「周りの目が気になるなら誰にも言いません。俺たちの仲だけの関係でも構いません」
「どうしてそこまでして私を…」
「あなたが欲しいからです」
「えっ…」
「こんな感情は初めてなんです。今まで色々な女性を見てきましたが誰にも惹かれなかった」
「今の天城さんなら私じゃなくても良い方が見つかるんじゃないですか?」
「…あぁ、前髪のことですか?」
「はい。だいぶ印象も変わって女性社員の間でも噂になってました」
「見た目で態度を変える人はもっぱら御免ですね」
「そ…そうですよね」
「それに比べて香坂さんは今も以前と変わらず接してくれる。だから心が綺麗だと思ったんです」
「いや、私は天城さんが思うほど良い人じゃないです!だ、だって…イケメンでお金持ちが理想とか言う女ですよ!?結局見るところはそこなんだって思いませんか!?」
私だって女性社員と所詮同じ。
カッコよくて、背が高くて、紳士的で、お金持ちであれば誰でも良いって言ってるんだもの。
「そう答えたのにも意味があるんじゃないですか?」
「え?」
「俺は知ってます。普段は綺麗に着飾っているあなただけど筆箱やバッグ、ファイルケースなどの備品類は最後まで使い古していること」
「え…」
「物を長く使える人は丁寧な人でもあります。少なくとも俺はそう思っています」
それは…身なりに気を遣っている分、他のものには節約をしているからであって…
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