第10話

「…天城さんがお金持ちかどうかはまだ証明できていません」


「あぁ、そうでしたね。…でしたらこの後、家にどうですか?」


「…はい?」


「変な意味じゃありません。家に来ればわかります」


ど、どういう意味…?


食事を終え、店を出るとタクシーに乗り、天城さんの自宅へ向かう。

普通だったら女性を男性の部屋に誘ってるようにしか聞こえないんだけど…



到着し、タクシーから降りる。


「香坂さん、ここの25階が家です」


「えぇ!?」


天城さんが指差した先には高級タワーマンションがあった。

本当にここに住んでるの!?


…でも、嘘かもしれない。

私は知ってる。

平気で女の前で嘘をつきまくる男を。

まだ信じちゃダメ。


「私、とことん男運が無くて今までに2人付き合ったことがあるんですが、1人は浮気性。2人目は嘘つきでした。…そのせいで私はまだここに住んでいることも信用できません」


「…なら、こうするしかありませんね」


「えっ!?ちょっと、天城さん!?」


天城さんは腕を掴むとマンションの中へ。

セキュリティを突破し、エレベーターに乗り込む。

…てか、セキュリティ突破した時点でもう良くないか?

ここに住んでる証拠じゃない?

それなのに今…部屋に向かってる?



25階に到着し、部屋の鍵を開ける。


「どうぞ」


「え…いや、そこまでは…」


「付き合うかもしれない相手の部屋、見ておかなくていいんですか?」


「えっ…?」


「俺はやましいことは何もありません。だから香坂さんに見られても何も問題ありません」


そ、そんな真っ直ぐに見つめなくても…!


「わ、わかったわ!見るだけだから!」


そう言って足を踏み入れてしまった。

…これが間違いだった。

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