第27話 超感覚

「だからこそたぎってきやがるってもんだァッ!!」


俺の体で一人キャッチボールをしやがる怪物相手に、吹っ飛びながらも反撃の熱線を放つ。

俺の体が吹っ飛んでいく先に、ヤツは異常な速度で先回りをしてきやがる。

まぁ当たらないだろうが、牽制も兼ねて一発撃っておかなければこの状況は覆せねェ。


「底が見えてきましたね」


やはりというべきか。

炯眼の剣聖は熱線を放った先におらず、俺の体の真上──上空に居た。

だが、その行動は俺でも想像に容易い!!


「テメェも一発食らっとけよッ!!」


落下していくヤツの体に向かって、俺は熱線を放とうとしながら、同時に剣を確実に当てるために横に薙ごうとするが────行動を起こすその瞬間にはもう既に、奴は最善の行動を取っている。


「遠慮しておきます」


ヤツの態勢がドロップキックの態勢になり──伸びたリーチを利用して俺の行動よりも圧倒的にはやく体に攻撃を当てる。

それにより、俺の体は轟音を立てながら地面に仰向けでめり込んだ。


「やはりその熱線、インターバルや数秒の時間を必要とせず放てるようですが……無暗に連続で使用しない所から察するに、新醒しんせいの消費が激しいようですね。撃てて10数発。その為、貴方は熱線に頼らず近距離での戦闘を望んだ。といった所でしょうか」


俺を見下ろしながら、炯眼の剣聖が冷静に分析した結果を告げる。

それは、恐ろしい程に的中している内容だが……。


「少し……違ェな。俺ァ元々、剣での戦闘の方が、性に合ってんだッッ!!」


起き上がりながら逆袈裟斬りを行う。

それに続くように、薙ぐ、袈裟斬り、薙ぐ、突き、薙ぐ。

だが、それらの攻撃がヤツの体に、服に、掠める事すら出来ない。

光速の域にまで達している剣術ですら、ヤツを捉える事は叶わない。


「スゲェ、スゲェぞ!!これが剣聖、これが最強!!」


――――――ウェカピポは言っていた。


「時に靭鬼じんきさん。一番当たりの能力は何か……勿論ご存じですよね?」


俺の名前を呼びながら、ウェカピポは問いかけてきた。


「あん?んなの、圧倒的な破壊力と速度を兼ね合わせた能力だろ、俺のみたいな」


今更そんな簡単な問題、戦いに行く前に出してくんなと思いながらも、俺は自身が思っている回答を繰り出す。

だが、その返答に対しウェカピポは「ふふっ」と笑みをこぼしながら告げる。


「ハズレです。正解は――“身体強化”ですよ」

「その笑みは俺を嘲笑したと受け取っていいんだなよし殺すテメェは今ここで」

「ふふっ、確かにあざけり笑いましたが……そこまで怒る程のものではないでしょう」


あーやべぇ。手早く本題に入らねぇと。ヤツの不気味な笑みと相まってマジで斬りたくなってきちまう。


「……んで、その質問が炯眼の剣聖となんの関係がある」


怒りを抑えながら、問いかける。


「透歌ちゃんの持つ超感覚は、身体強化系の能力の中でも飛びぬけて異質。研ぎ澄まされすぎた感覚により数秒先に及ぶ未来を視る事を可能とし、五体の全てを自身が思い描く理想と一切の乖離かいりをさせる事なく操り、おまけに身体能力を数百倍にも跳ね上げるのです~」


――――――ハッ、ったく。とんだ怪物だ。


「これで、お灸は据えれたでしょうか」


ゆっくりと、横たわる俺に向かって歩みを進めながら、炯眼の剣聖は口を開く。

ここまでの実力差を実感させられちゃァ、流石の俺も――。


「……何勘違いしてやがる。俺の本気ってのは――――」


もう出し惜しみはしねぇ。

ここから更に、ギアを上げるッッッ!!


【  極芸きょくげい  】

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