Chapter 3
第21話 始動
学園都市内に存在するスラム街、通称G地区。
その中に位置する廃ビルに、二つの人影が蠢いていた。
「珍しいヤツが現れたもんだな、俺と殺し合いでもしてくれんのかオイ」
耳や口にピアスをふんだんに付けた黒髪の
「相変わらず戦闘がお好きなんですね~」
そう言って笑うのは、白い髪をベースに多種多様な色が入り乱れた異質な髪色を持った少女だった。
「ですが、生憎と今日は戦闘ではなく、折り入ってお願いをしにきました~」
「お願いだと?」
男は訝しむように少女を睨む。
その凄みは、数多の戦場を駆け巡った猛者が発するレベルのもの。
「まぁまぁ。そんなに怖い顔をしなくても良いじゃないですか~」
しかし、それを意にも返さないように少女は朗らかな声で言う。
「御託は良い、さっさと本題に入れウェカピポ。お前は俺に何を望む」
男はウェカピポと呼んだ少女に向かってそう問いかけると、彼女は笑みを崩さぬままその一言を口にする。
「炯眼の剣聖――漣透歌ちゃんがなんと!無影さんの逮捕をきっかけに動き出してしまいました~。ですので、貴方には透歌ちゃんと一戦交えて、今の実力を測ってきてもらいたいのですよ~」
その言葉を言い終えた瞬間、男の目つきが鋭さを増す。
そんな様子を見て、ウェカピポは再度押し込むように告げる。
「貴方ならこの話――受けてくださいますよね?」
ウェカピポは確信していた。
彼がこの話に乗る事を。
通常、負ける戦いなんてしたくはない。
それは誰しもが共通して持っている感性だろう。
――しかし、彼は違う。
根っからの戦闘狂である彼にとって、勝ち負けなんていう結果はどうでもいい。
手に汗握る命のやり取り、緊迫とした状況下での死闘。
それだけが、彼が戦いに対して求めているものである。
「ハッ、なるほどな。大方、誰に頼んでも引き受けてくれなさそうだから俺の元まで来たって所か」
適格な分析と冷静な口調をしているが、興奮と期待が、確かに彼の心と体を支配していた。
それを示すかのように、男は悪辣な笑みを浮かべながら叫ぶ。
「――だが、それでいい。その判断は正しい!!いいぜウェカピポ。俺が漣透過と戦う、殺す、最強を叩き潰す!!!」
「ふふっ。頼もしいですね~」
そんな言葉を発す彼女の声色は、朗らかでありながらどこか心の籠っていないもの。
だが、男にとってはそんな事眼中にないどうでもいい事だった。
「それでは早速、行動に移ってもらうといたしましょう。詳細な場所は後でお伝えいたしますね~」
彼女のその言葉に対して、男は返事を返さず背を見せながらビルの奥へと姿を消してしまった。
そうして一人残されたウェカピポは、ビルの窓から外を眺めながら静かに呟く。
「…………さて、彼が殺される前に私がキチンと回収できるように、ちゃんとオシャレしないとですね~」
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