第18話 この目のハイライトが消えたメイドさんは……!?
――あれから時間は経ち、待ちに待った昼休みが訪れたというわけで、俺は剣聖様に会いに彼女が属していると聞く2年D組に足を運んだわけだが……。
「……居なくね?」
廊下から室内をぐるりと見渡すが――あの時見た白色の髪に緑色のメッシュが入り混じった特殊な髪色をした少女は見当たらなかった。
どうやら、そう簡単に事は運ばないらしい。
「……しゃあない、D組の先輩達に聞いて回るか」
というわけで一歩、廊下と教室の境界を乗り越え、俺はD組の中に足を踏み入れようとしたのだが――。
「貴方が、玄斗様ですね」
一つの無機質な女性の声が、俺の背中に投げかけられてくる。
しかし、それよりも先ず真っ先に思うのはその脅威的な気配の薄さ。
まるで煙に巻かれているかのように、その存在をキッチリと把握出来ないような異質さを兼ね備えている。
「そうだが……一体どちら様だ?」
俺は振り返り様、問いかける。
そうして目に映ったのは、この学園内では先ずお目にかかれないであろう黒と白を基調としたスタンダードなメイド服を着こなしたクリーム色のロングヘアーの女性。
身長は160は超えているだろうか、普通にデカい。
しかし、それよりも注目してしまうのはハイライトが一切宿っていない無機質な目。
並大抵の人間であれば、数秒目を合わせただけでもどこか恐怖を感じ取ってしまうだろう。
「名乗る程のものではありません。ですが、名乗りたくもないのかもしれません」
「んん???」
オイ待ってくれ、絶対コイツキャラ濃いタイプの人間だって。
まだまともに話してなくても今の一言だけで分かるって、ヤバいって。
俺とは明らかに別ベクトルのヤバさを兼ね備えたヤツの登場に、困惑しながらも俺は口を開く。
「あー……嫌なら名乗らなくてもいいぞ、うん」
「ありがとうございます。私の名前は
「……………………」
なあ、これはふざけてるのか?コイツなりのギャグなのか?その割には目は据わってるし表情は真顔だし佇まいはメイドの衣装を着ているだけあって美しいぞ?
「おーけー分かった冬芽さんね……それで、俺になんか用か?」
これ以上話していては脳がもたないと判断した俺は、彼女が本題に入りやすいようそう言葉を発する。
すると、彼女はどこか「そうでした」と言わんばかりにハッとした表情を浮かべ……口を開き始める。
「透歌様は屋上に居ますよ」
「……なんだって?」
突然出された情報に、俺は思わず聞き返してしまった。
透歌――その名前は、炯眼の剣聖の本名だ。
「その反応……もしかして、透歌様を探しておられていなかったのですか?」
小首をかしげながら、冬芽さんは言った。
いや、確かに探しては居るのだが……何故彼女は俺が炯眼の剣聖を探している事を知っているのだろうか?
「いや、探してたのは合ってるんだが……どうしてその事を知っているんだ?」
それを疑問に思った俺は、思わず肯定と同時に問いかける。
すると、彼女はただ一言。
「透歌様がそう仰っていましたから」
――と、まるで炯眼の剣聖は俺が自身を探しに来る事を分かっていたと捉えられるような言葉を言い放つ。
とはいえ、もし俺が来る事が分かっていたんだとしたら教室で待っていてくれてもよかったのにとはちょっと思ってしまうが。
「屋上は透歌様だけにしか出入りが許可されていない特別な空間です。他の一般生徒は許されていないからこそ、玄斗様と会話をする為にそこを選んだのです」
そんな俺の考えを見透かしたのか、冬芽さんはただ淡々と理由を述べた。
……なるほど、なんで俺と一対一なんかで会話したいのかは知らんが、とりあえずは分かった。
「分かった。んじゃちょっくら行ってきますわ。ありがとな」
そうして俺は、背を向けて屋上に向かう。
なんだか不思議な人だったな……なんて感想を残しながら。
――――後書き――――
なんと累計4万PVも達成していました!マジで俺からしたら感動的ですありがとうございます;;
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます