第17話 [急募]炯眼の剣聖の居場所について
「――――ってな事があったんだがよ、正直マカロンを鼻から食べる事は不可能だよな?」
「…………せめて、せめてよ。もう貴方に対して話しかけてくるなとは言わないからせめて理解できる日本語で、内容で、話の文脈を前後でキチンと繋げて、会話してくれないかしら」
朝、教室内にて。
俺は孤高という言葉がピッタリ当てはまる
その内容は――。
「なら簡潔に言うぞ、炯眼の剣聖様に会いたいんだがどこに居るか知らないか?」
「貴方さっき言ってた言葉と違う事言ってる自覚あるのかしら?」
どこか諦めたような表情を浮かべ頭を抱えながら、天崎が言う。
しまった、天崎は俺的には話しやすい部類の人間であった為、ついふざけすぎてしまっていた……反省反省。
「はぁ……コミュニケーションに難がある人間と話すのはこうも疲れるのね……いえ、話す所か聞いているだけでも疲れてしまうわ」
小さくため息を漏らしながら、彼女は俺に視線を向ける。
「残念だけれど、居場所は知らないわ。ただ、彼女が属しているクラスは2年D組らしいから、そこに行けば会えるんじゃないかしら」
「マジか、有力すぎる情報サンキュー」
相変わらずツンケンしている態度をしているが、なんだかんだ言って教えてくれる天崎は良い人間だと思う。
……いや、もしかしたら俺に対する対応は素直に応じれば早く済むと考えてのものなのかもしれないが。
「それで?炯眼の剣聖に会いたいなんてこれまた唐突だけれど、一体どうしたのかしら?」
そんなマイナスな事を考えていた矢先、天崎から会話が振られる。
俺と話を続けようとしてくれてちょっぴり嬉しくなったのは秘密だ。
「特にどうかしたってわけじゃないんだが、昨日ちょっと助けてもらったんだ。だから直接お礼しに赴こうかなと」
俺は炯眼の剣聖に会いたい理由を簡単に説明する。
正直、彼女に居場所を教えてもらっていなかったら……俺が到着するのが遅れて、きっと燈はあの殺人鬼に殺されていただろう。
だがそれを結果的に防いでくれたのは炯眼の剣聖であり、そうでなくともわざわざ居場所を教えてくれたのは有難すぎる事だ。
故に、頭の一つでも下げに行くのは当然の事だろう。
「助けてもらったって……一体どういう事?」
本気で気になるのか、真面目な顔をして問いかけてくる天崎。
「いや、そんな真面目な顔されてもなんら面白い話じゃないぞ、ただ燈の居場所を教えてくれたのが炯眼の剣聖様ってだけの話だ。どうやって知ったのかは知らんけどな」
「なるほどね。本当に面白くない話だったけれど、少なくとも興味深い話の一つだったわ」
それだけ返事を返すと、天崎は黒板の方へと向き直り、そして――独り言を呟くかのように、疑問を呈するかのように、小声で呟く。
「炯眼の剣聖の能力がもし、他者の居場所を知る事が出来るものなのだとしたら……そもそも、剣聖になんて成れるはずがない。彼女の能力が一体どういったものなのか……益々興味が湧くわね」
…………いいや、天崎はそう言うが、実際の所成れる。
過去に居たのだ。素で身体のリミッターを外し、能力を用いずとも炯眼の剣聖と同じように常人を遥かに凌駕する身体能力を発揮する事を可能にしている奴が。
――だが、炯眼の剣聖はそれとはまた別ベクトルな気がしてならない。
言うなれば……新醒の最高到達点、誰もが羨み望む理想の能力を持っているのではないかと思っている。
「そうだな。ただ、実際に見た俺が言えるのは――」
そうして俺は、静かに告げる。
「速すぎる……って所だな」
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