第16話 妹(ヤンデレ(同年代)(俺の方が誕生日遅い))
横顔は髪の毛のせいでよく見えない。
知り合い?いや、この学園に俺の知り合いは居ない…………はずだよな?
けど、なんだか見たことあるような面影を感じ取れるんだよな……。
「あのー、なんか俺に用ですかね」
ドアの横に設置されている22という文字をチラリと最初に見て確認しながら、俺は少女に問いかけた――その瞬間だった。
【
馴染みのある言葉が響いてきたかと思った次の瞬間。
俺の顔を抉るように突如として襲ってきたのは――手刀。
「あぶね」
とは声に出しながらも、俺はその攻撃を余裕を保ちながら後ろに一歩下がることによって回避する。
そうして今一度向き直った時、少女から沸々と激しく湧き出す黒いオーラが見えた。
「お兄遅い、遅い遅い遅い!!」
それはさながらツンデレ妹のような声色といえば伝わるだろうか。
甲高くもあり、どこか可愛げが感じられる声が俺を叱咤するかのように響く。
……あーはいなるほど。一人っ子である為妹なんて居るはずもない俺の事を何故か兄呼ばわりする人間には心当たりしかありません完全に理解しました。
だからこそ、問いかけよう。
「なんだ。お前もこの学園に入学していたのか、
150cm程の身長に、ピンク色のゆめかわでふわっとしているツインテール。
そして薄い紫色の瞳を宿す彼女の名前は
俺がよく世話になっている早駆流身体術、それを創始した人物の子孫であり――8歳の頃にはもう既に免許皆伝を果たしている大大大天才である。
ちなみにこうして会うのは恐らく一年半ぶりぐらいだし、俺の事を兄とか言ってるけど同い年だし、なんならコイツの方が誕生日は早い。
「お兄が居るんだから居るに決まってるでしょ!?」
「うん、そうは決まって無いと思うんだが?てか決まってないでくれ?」
てか待て?遅いって言うって事はコイツずっとここで待ってたのか……?
「つうか、もしかしてだけどここでずっと俺の帰りを待ってたとか、まさかそんなわけ――」
「待ってたよ!!自由時間になってからいち早く部屋番号聞いて来たから軽く8時間くらいは待ってたよ!!」
ないよな?と恐る恐る問いかけようとしたが、それよりも早く綾愛が言葉を発した。
おい再度ちょっと待て、その執念みたいなものはどこから出てくるんだ。
「マジか…………うん、ごめん」
しかし、いくら知らなかったとはいえ綾愛がそこまで待っていてくれたという事実に脱帽しつつも申し訳なさは感じてしまうわけで――一応謝罪の意を表明しておく。
「あ、べ、別に…………その口ぶりからしてお兄は私がこの学園に入学してる事知らなかったみたいだし、うん。いいよ……」
先程までの怒りはどこへやら、俺が申し訳なさを醸し出した謝罪をすると、綾愛は少し慌てながら目を逸らしがちにそう呟いた。
「て、てかさ!!お兄、勘が鈍ってない所かまた更に強くなった?私、結構殺す気でいっちゃったっていうか手加減無しだったと言いますか…………軽々しく避けたよね?」
え?あの不意打にも近い攻撃ってガチで俺の命を奪い取ろうとしてた殺人技だったの?確かに一直線に俺の顔狙ってきてたけど、うん怖。
「いや、強くなっては無いぞ。多分、今日殺人鬼から友達を助ける為に戦闘したからな、その余韻で体が温まってるだけだと思う」
「ちょっと待って何その話詳しく」
「俺の雄姿が気になるって?しょうがない奴だぜ」
「お兄の雄姿……録音して観賞用、実用、布教用、スペアで分けておかないと……」
はあはあと息を荒くしながらそんな事を言う綾愛に、俺は今日あった出来事を話す事をやめようと決意した。
てか録音で観賞用と実用って何?
「でも、確実に強くなってるよ……お兄は」
どこか懐かしむように、綾愛は呟く。
「だって昔のお兄ときたら、早駆流身体術のはの字を習得するのに大苦労してたし、『俺は最強に成る!!』とか言いながらやってられないとか言って投げ出したりしてたし」
目じりに涙を溜め笑いをこらえながら、俺の事を小馬鹿にする。
そんな彼女の様子に、俺は少しふてくされながら口を開く。
「しょうがないだろ、難しい物は難しいんだ。俺の最高級の才能を以てしてもな」
「最高級の才能ねー…………まっ、確かに難しいのは合ってるけど。だって早駆流身体術は己の体を剣と認識し、研ぎ澄まし、洗練させ刃と言う名の武器にする文字通り究極の武術にして剣術。習得難易度SSS、簡単なわけないよ」
「8歳で免許皆伝に至った人間が言うと嫌味に聞こえてしょうがないな」
やっぱりあれか?親ガチャと血統ガチャSSR超えてURなのか?コイツは。
てか、はっきり言って才能だけに飽き足らず容姿も美少女と呼ぶに相応しい程のものだし、UR以上はあると思う、レジェンドレア?
「てかお兄、いつまで廊下で立ち話させるのかな?」
俺に向かって手のひらを差し出しながら、綾愛が言う。
そんな彼女の表情は、早くこの部屋の鍵を寄こせというのがどことなくひしひしと伝わってくるものであった。
「え?いや流石に今日はもう自室に戻った方が良いと思うんだが」
この学園に居るって事は、明日また会えるチャンスはいくらでもあるはず。
今日でなくたってゆっくりと話す事が出来るはずだが……。
「は何言ってるの?お兄の部屋は私の部屋だし、私の部屋はお兄の部屋でしょ?それとも何?お兄は私が部屋に入る事が嫌なの?それとも私と一緒の空間に居る事が苦痛なの?そっかそっかでも納得したよやっぱり一年と132日も行方をくらましてたのは私と会いたくなかったからだったんだてか私がこの学園に入学しなかったらもっと期間が空いて――――――――――――――――――」
瞳のハイライトは完璧に掻き消え、まくしたてるような早口と暗い闇のようなオーラを発する綾愛を見て、俺は思う。
さっきまでの平和(?)な雰囲気isどこ。
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