第15話 聖人君子が服を着て歩いていなかったらただの変質者、変態なのだけれど
他愛もない話(俺が一方的に話しかけてただけ)を続けて歩く事5分程度。
俺達は、寮の入り口へと辿り着いていた。
「1年A組の徒篠玄斗という者なんですけど」
今日初めてこの場に訪れたという事で、当然部屋の鍵を持っていない俺はカウンターにて職員さんに名前を告げると「徒篠玄斗さんね~」と名前を確認するかのように復唱される。
そうして数十秒後――鍵を持ってきた女性が俺の部屋の番号を告げるのと共に、トレイに乗って鍵が渡される。
さて、後は――。
「後すみません、この寮って門限とかっていうのは――」
俺の今後の人生において必要不可欠なこの情報について問いかけるのだった。
***
「というより驚いたわ。貴方、本当に稲刹さんを探しに行っていたのね」
二階へと至る階段を上っている最中。
俺が鍵を受け取った事により、一度も寮に赴いていない事が分かったのだろう、天崎が到底驚いているとは思えない普段通りの凛とした声を響かせる。
「当たり前だ。俺は有言実行の男、聖人君子が服を着て歩いてるなんて言われいるレベルで出来てる人間だからな」
「聖人君子が服を着て歩いていなかったらただの変質者、変態なのだけれど」
おっと、確かにそう言われてみればそうだな。
いやはや、こんな脳死で会話しているような人間と違って天崎はキチンと脳を使って会話してくれてありがたいものだ。
「それじゃ、俺の部屋は
天崎の足取りは止まる事無く三階へと向かおうとしている。
故に、聞くまでも無く察した。
「そう。同じ階じゃなくて嬉しいわ」
一歩。
階段を上る音が響くが――その続きが聞こえない。
俺は不思議に思いながら、足を止めた天崎の背中を見つめる。
「…………一応、警告しておいてあげるわ」
その時、天崎が振り返り俺を見る。
警告、か。一体何の話なのだろうかと少し身構えておく。
「柊弥人――彼には気をつけなさい」
「それは一体どういう意味だ?」
間髪入れずに、俺は何食わぬ顔をしながら問いかけると――天崎はまた一歩階段をのぼりながら告げた。
「確証はないわ。ただの勘よ」
それだけ言い残すと、天崎は俺の返事を聞くことなく残りの階段を駆け上がって行く。
「一見、爽やかな優等生なんだがな」
ただ天崎、安心しろ。
俺も、アイツにはどこか違和感を持っている。
まだ確信めいたものは持っていないが。
――そんな事を思いながら、俺は自室である22号室へと向かおうとしたのだが……。
「な、なんだ……?」
思わず目の前の不可解な光景に言葉を漏らしてしまった。
何故なら、俺の部屋の前らしき場所でこの学園のスカートを着こなしたイマドキJKの姿が、ドアの前で体育座りしながらスマホを弄ってる少女の姿が、確かに見えるのだから。
――――後書き――――
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