第7話 彼女は、相対する【改稿】
「うぅ、思わず飛び出てきちゃった…………」
ランドセルを砂場に置いてはしゃぎまわる子供達の声が響く公園で、私はベンチに座り頭を抱えて俯きながら、憂鬱な気持ちを胸にそんな事を呟いていた。
その理由は勿論、先程行われた自己紹介で引き起こしてしまった一件。
「どうして私、自己紹介ってなるとあまり喋れないんだろ……」
いや、自己紹介だけじゃない。普通に他愛もない話をしている時だって、私の言葉は全ておどおどしているし、スムーズに上手く言葉が出てきた試しなんて無いし…………うぅ、本当にどうしてこんな性格になっちゃったんだろ……。
「こんな時、お姉ちゃんならどうするのかな……」
私には姉が居る――いや、正確には“居た”
明るくて、優しくて、私よりも武術が秀でてて……それでいて聡明な姉が。
「会いたい、会いたいな…………お姉ちゃん」
そうやってどんよりとした空気を張り巡らせていると、子供ながらに心配を示したのか、公園ではしゃぐ男女が足音をバタバタと発しながらコチラへ近づいてきた。
「お姉さん、一体どうしたんですか?」
礼儀正しい言葉遣いで、駆け寄ってきた一人の男の子が不思議そうな顔をしながら問いかけてくる。
最近の子は凄いな。一見すると小学4年生くらいなのに、こんな私よりも言葉遣いが丁寧で、それでいてハキハキと喋りかける事が出来るのだから。
「う、ううん。何でもないよ、大丈夫。ありがとね」
と、一応子供相手に虚勢を張って見たものの、正直心は疲弊している。
明日から教室に赴く事すら億劫だし、というより学園の敷地内に入る事すら躊躇している。
きっと、私に対するあだ名だってもうイケイケな人達の間で決まっている事だろう。
一体どんなのかな、シンプルに陰キャだったりおどおどだけにオッドセイだとか一割くらいしかあっていない語呂合わせで呼ばれてたりしてないかな……。
「嘘。絶対に大丈夫じゃないですよね?」
私のその虚勢を受けて、男の子より年上に見える女の子が言葉を発す。
こんなにも幼い子に、こんなにも早く看破されるとは……余程態度か顔に出てしまっているのだろうか?
「え!?う、嘘じゃないよ。うん。大丈夫」
自分よりもずっと年下の子供相手にもスムーズに言葉が出てこない自分にも更に嫌気がさす。
ここは年上らしく、ビシッとした言葉で笑顔を振りまいて心配無用とでも言えれば百点だったのだろうか?
「わ、私の心配は大丈夫だから、遊んできなよ。きっと私なんかと話すより楽しいよ」
そう言うと、二人は顔を見合わせて目をぱちくりさせた後、何か良いことを同時に思いついたのか表情がニヤつく。
「ねえねえお姉さん。僕たちと遊んでくださいよ!!」
「うんうん!!遊んでください!!」
そうして私の方を向いたかと思いきや、男の子からはそんな提案が、女の子からは男の子の提案に乗っかるかのような言葉が飛び出してきた。
え、どうして。一体何がどうなったらそんな考えに辿り着くの。子供のコミュニケーション能力怖いよ……。
「わたっ……私は本当に大丈夫だから――」
「じゃあお姉さん、遊具の方行きましょ!!」
「ちょっっっ――――!?」
私の言葉を無理やり遮るかのように、男の子と女の子が同時に私の両手を掴んで引っ張る。
とはいえ、二人の力が合わさっているが子供である為、振りほどくのは簡単だ。
……だけど、ここまでしてくれるこの子達の善意を、私には無駄に出来なかった。
二人の力に流されるまま、私はベンチから立ち上がる。
あ、そういえばこういう時って自己紹介した方がいいんだっけ……でも、今のタイミングはちょっとおかしいかな?
なんて事を思いながら、二人と一緒に自分でも遊具の方に向かおうとした時だった。
「――――!?二人共、ごめん!!」
今度は逆に、私が二人の腕を掴み、後ろに向かって思いっきり腕を引く。
これにより、二人は一気に私の背中の後ろにまで体が下がる。
そしてその刹那、一閃。
男の子達が居た場所に吹く風が――裂けた。
「二人共、私から離れないで、傍に居て」
周りの状況を確認するついでに、脳を回転させ現状を整理する。
突然、眼前の風の起こりが断ち切れたと思えば、次の瞬間には男の子達が居た場所に吹く風がまるで刀で袈裟斬りでもされたかのように確かに裂けた。
これは明らかに攻撃行為……だけど、姿が一切見えなかった。
恐らく眼前に居たという事を仮定するとしたならば、攻撃者は実体を持たない、まるで霞のような存在になれる力を持つ――いや、実態を持つ事が出来なければ刀は振るえないだろう。
つまり、考えられる可能性は――。
「透明化!!」
その結論に至った瞬間にはもう既に、私の両手は左側の腰回りに。
まるで剣を鞘から解き放つ時のような、そんな態勢をする。
【 “
私がその
そうしてその粒子は刃渡り60cm程の雪のように白い鞘に包まれた剣へと姿を変え――この世界へと姿を現した。
「あらやだわ。もうバレちゃったし……流石、風月天戦学園の生徒様って所ね」
鞘から剣を解き放ち構え、次なる攻撃に対処しようと態勢を整えていた時だった。
目の前から妖艶な女性の声が響いたかと思えば、右から左にかけて徐々にメッキがはがれていくかの如く、誰も居なかった空間からいきなり黒髪の170cm程の長身の女性が姿を現した。
――――後書き――――
バトル系なのにバトルに入るまでに7話も使ってる奴がいるらしい。
これから主人公君はどのように活躍するのか、見ものですね。
ps.ちょっと改稿致しました。
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