最終話 やっと少し
登場人物。
性別:男
年齢:23
身長:176
性別:女
年齢:23
身長:149
性別:男
年齢:23
身長:186
3月の初め。
(さ~ぁて、どのネックレスにしようかな?)
そう悩みながら太希はガラスケースに並べられたキラキラ輝くネックレス達を見つめる。
{私に似合うネックレスでいいよ。}
※
ネックレスを買った太希は店をでる。
「うぅ~。3月に入ってもまだ寒いなぁ。」
そう愚痴をこぼす太希のスマホが鳴る。
「
そう太希は疑問に思いながらも電話にでる。
「はい?」
「や、
そう太希の名を呼ぶ
「どうしたんだよ。そんなに慌てて。」
「水樹が…」
「水樹が?」
「事故に
その七海の言葉を太希の頭が理解するのに数分かかる。
※
静かな病院の椅子で太希と七海は並んで座っていた。
「それ。水樹に渡すネックレス?」
そう聞かれて太希は自分の横に置いてある紙袋を見つめる。
「…あぁ。」
そう太希は元気のない声で答える。
「そう。だったらちゃんと渡してあげなよ。」
そう言い残すと七海は立ち上がり病院を出ていく。
1人になった太希は静かな視線を紙袋に向ける。
紙袋を少し見つめた後に太希は重たい身体を立たせて水樹が居る部屋へ入っていく。
※
太希は無の感情で動かなくなった水樹を見下ろす。
太希は今日、人は簡単に死ぬのだという事を理解した。たった1度の不運でこうも簡単に人は死んでしまうのだと。
しばらくの間、水樹を見つめていた太希は紙袋からネックレスを取り出すと水樹の首に優しくつけてあげる。
「…うん。ちゃんと似合ってるよ…水樹。オレのセンスもなかなかいいだろ?
なぁ。水樹…。」
そう太希は水樹に話しかけるがもちろん返事など返ってこない。
その現実が太希の心を強く締め付ける。
{高校生の時から…ずっと好きでした。私と…付き合ってください。}
「…返事を言わせてくれよ…。
オレも…ずっと好きだったって…言わせてくれよ…。なぁ…水樹…」
{どんな返事がくるのか楽しみにしてるね。}
「…まだオレの返事…伝えてないぞ?
オレの想いを…伝えてないぞ?
なのに…
お前の我がまま…。いつも文句言ってるけどさ…。本当は…嬉いんだぜ?
お前が笑顔で…笑ってくれるから。
だから…これからも…」
太希は苦しくてその先の言葉を口にする事ができない。
太希はもう…泣き崩れる事しかできなかった…。
その
※
太希が病院を出るともうすっかり夜になっていた。
「…寒いなぁ。」
そう太希は小さく呟く。
{これで少しは温かいでしょ?}
水樹の声が太希の耳に響く。
その声に太希は目線を自分の左腕に向ける。
だが、そこに自分を温めてくれる水樹の姿はない。
太希は寂しい背中で1人、夜道を歩いて帰る。
※
約2週間後の3月14日。太希の自宅。
「なぁ、
そう太希はインスタントのミルクティーを飲んでいる圭吾に話しかける。
「ん?」
「本当は今日だったんだよな。」
「なにが?」
「オレが水樹に返事を返す日だよ。」
そう太希が言うと2人の間に少し沈黙が流れる。
「…まだ
そう今度は圭吾が質問する。
「…どうだろうなぁ。
まだ、心がフワフワしてるんだよ。
時間が心の傷を癒してくれるのには結構な時間がかかるのかもな。」
そう太希は答えると1口ミルクティーを飲む。
「そうか。まぁ、ゆっくりやれよ。」
そう圭吾は優しい言葉をかける。
「なぁ、圭吾。」
「ん?」
「もし、オレと水樹が付き合ってたら、どんなカップルになってたんだろう?」
そう尋ねる太希の視線は遠い空を見上げていた。
「…さぁな。でも、意外と今までと変わらなかったかもよ?」
その圭吾の言葉に太希は「え?」と言って驚く。
「だって、元々お前等カップルみたいに仲良かっただろ?」
そう言われて太希は水樹の言葉を思い出す。
{こうやって歩いてると私達、まるでカップルみたいだね。}
「・・・そうかもな…。」
そう太希は軽く微笑む。
親友の少し嬉しそうな表情に圭吾は笑みを見せると目線を窓の外に向ける。
「…そろそろ暖かくなるなぁ。」
そう圭吾は太希に話しかける。
「…あぁ。やっと少し温かくなってきたよ…。」
そう太希は言葉を返す。
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