第3話 公衆の場ではお静かに

登場人物。


山西やまにし太希たいき

性別:男

年齢:23

身長:176


神川かみがわ水樹みずき

性別:女

年齢:23

身長:162


四条しじょう七海ななみ

性別:女

年齢:23

身長:149


中星なかぼし圭吾けいご

性別:男

年齢:23

身長:186





次の日。

太希たいきは昨日の水樹みずきの告白が嬉しくてあまり眠れなかった。


「・・・まるで遠足を楽しみにしてる、小学生のガキだな。」


そう太希は小さく呟くとベッドから下りる。


そのまま体を伸ばすと顔を洗うためにキッチンの流し台に向かう。


顔を洗った太希は「よし。今日は気分よく小説が書けそうだ」と嬉しそうに呟く。



その日の昼間。

水樹は幼なじみで親友の四条しじょう七海ななみと喫茶店でお喋りをしていた。


「えぇ~!!山西やまにし君に告白した~ぁ!!」


そう話を聞いた七海は大きな声で驚く。


その声に周りに居る他のお客さん達が目線を向ける。


そんなお客さん達に小さく頭を下げると七海は声を小さくして話を続ける。


「で?返事は?もちろんOKよね?」


「ううん。まだ聞いてない。」


「はぁ?!」


そうまた驚いて大きな声を出しそうになるのを七海はなんとか抑える。


「なんで?聞いてないの?」


そう小声を続けたまま七海は尋ねる。


「それはロマンチックのためだよ。」


「ロマンチックのため?」


そう訳が分からない七海は聞き返す。


「そう。私、告白した時にね、腕時計も一緒にプレゼントとしたんだ。

バレンタインのプレゼントとして。

ホワイトデーにそのお返しと共に告白の返事を聞くの。普通に返事を聞くよりもロマンチックだと思わない?」


そう水樹がニコニコした笑顔で言う。


水樹の個性的な考えに七海の頭はついていかない。


「なんと言うか…あんたらいしわね。

ともても個性的な考えだ。

さすが芸術家ですよ。」


水樹はSNSで人気の個性的なイラストを描くイラストレーターなのだ。

その絵はファンの間で芸術と呼ばれている。


「私は別に自分のことを芸術家だとは思ってないけどね。」


そう水樹は抹茶を飲みながら言葉を返す。


「とにかく楽しみだなぁ。ホワイトデー。」


そうウキウキしている親友の様子を七海は優しい瞳で見つめる。


(まぁ、正直、返事は聞かなくても分かってるけどね。)


そう七海は心の中で思う。



その日の夕方。

仕事を終えた太希は身体を伸ばす。


「うん。今日は大分進んだな。

やっぱ、メンタルって大事なんだなぁ。」


そう太希は1人深く頷く。


そんな太希のスマホが鳴る。

画面を確認すると中学から付き合いがある親友の中星なかぼし圭吾けいごからの電話だった。


「おう。久しぶり。」


そう太希は明るい声で電話にでる。


「おう。久しぶり。今時間大丈夫か?

調度こっちに帰っててな。良かったら、飯でも食いに行かねぇか?

高校の時によく行ってた回転寿司。」


そう圭吾が聞いてくる。


「いいぜ。調度仕事も終わったとこだし。」


「じゃ、現地集合ってことで。」


「OK。」


そう返事を返すと太希は電話をきる。


「圭吾か。確か2年ぶりぐらいか。」


そう呟くと太希は着替えて家をでる。



「で?どうよ?小説のほうは。」


そうマグロを食べながら圭吾が尋ねる。


「ん?そこそこって感じだな。

お前の写真のほうは?」


そう今度は太希が質問する。


「まぁいい感じだよ。好きなとこ行って好きな写真撮れてんだ最高に楽しいよ。」


そう圭吾は微笑む。


「そりゃいいね。オレの小説が文庫化したら、表紙に使わせてくれよ。

お前の写真。」


そう言いながら太希は大好きなサーモンを口に運ぶ。


「喜んで。」


そう圭吾は答える。


「そういえば、神川かみがわさんとはまだ付き合いあるのか?ずっと一緒だろ?お前等。」


そう圭吾が尋ねる。


「あぁ。昨日、告白されたよ。」


「へぇ。そうなんだ。…ん?」


そうあっさりと言われたので圭吾は一瞬聞き流す。


「…すまん。もう1度言ってくれ。」


そう圭吾がお願いする。


「昨日、告白された。」


そう太希は真顔を真っ直ぐ圭吾に向けて答える。


「はぁ?!まじで?!」


その圭吾の大きな声に周りのお客さん達がビックリする。


「公衆の場ではお静かに。」


そう太希に軽く注意されて圭吾は声を小さくする。


「で?なんて答えたんだ?

もちろん、OKしたんだよな?」


そう聞かれて太希は昨日の事を説明する。


「・・・はは。神川さんも変わらないなぁ。」


そう笑いながら圭吾は熱いお茶を飲む。


「でも、OKするつもりなんだろ?」


「…あぁ。」


そう太希は静かな声で答える。


「じゃ、お返しのネックレス買わねぇとな。安物なんか買うなよ?100万ぐらいの買って驚かせてやれ。」


そう圭吾が明るい声で言う。


「バーロー。そんな金ねぇよ。」


そう太希は言葉を返す。

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