第15話 流行りのお菓子

 流行りのお菓子


 昼休み山越くんが渋い顔で何かを噛んでいた。

 眉間にシワを寄せ、ゆっくりとそれを咀嚼そしゃくしている。


「山越くん……なに食べてるの?」

「グミ」

「そんなに美味しくないの?」

「着色料の味しかしない」

「どんなの?」


 私が言うと、山越くんが一つのパッケージを取り出した。

 今流行りのグミだ。SNSでインフルエンサーがよく食べているやつである。ちょうど私も気になっていた。


「私も一つ食べていいかな」

「だめだよ筒井さん。こんなに不味いものを筒井さんに食べさせるわけにはいかない。買った僕が責任を持ってこれを処分するべきだ」


 処分て。でも、捨てない山越くんは真面目だなあ……。


「そうなんだけど……私前から食べてみたかったんだよね。そんなに不味いならパッケージで買いたくないし……。お願い、ちょうだい」

「分かった。後悔しないでね」


 山越くんが差し出したパッケージから私は一つグミを取って、食べた。


「うわ……」


 なにこれ。甘いけど砂糖の味じゃない。あとほのかに苦い。未知の味なんだけど。

 そしてお世辞にもおいしいとは言えない。口当たりがねっとりしていて口に張り付く。グミなのに口の水分がどんどん奪われていく。うん、ここまで描写しておいてなんだけどはっきり言おう。


 不味い。


「山越くんこんなのよく最後まで食べようと思ったね……」

「食べ物は大切にしなきゃ駄目でしょ?」


 相変わらず苦虫を噛み潰すような顔。いや、実際そんな味なんだけど。


「でもこれは……口直しが必要かもしれないね」

「うん……」


 一緒にグミを最後まで食べ、自販機に飲み物を買いに行った。

 それはなんだか、とても楽しかった。

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