第13話 魔法少女

「筒井さん」


 休み時間に入り、立ち上がろうとする私を引き止めて山越くんは言った。


「僕と契約して魔法少女になれるとしたら……なる?」

「ならない」


 ……どこからツッコんだらいいのか分からない。

 なにこの質問。魔法少女なんて、アニメの世界じゃないんだから。しかもなんで山越くんと契約しなきゃなの。ふつう、妖精みたいな謎生物とじゃない?


「なんで?」

「なんでって……魔法少女になったら、魔法で敵を倒さなきゃいけないじゃない?」

「そうだね。きっと悪の組織とも戦うことになる」

「そんなの怖いよ。だから私はやらない」

「そっか……」


 山越くんはシュンとしてうつむく。私は少しそんな山越くんが気になって尋ねた。


「なんでいきなりそんな話始めたの?」

「……妹が魔法少女になりたいって言い出したから」


 山越くんの妹は小さいのかな。にしたって、それを同級生の女子に話題として振っちゃうか。面白いな山越くん。


「とりあえずそれっぽい服を着せてステッキを持たせたら満足するかな?」

「それがいいんじゃない?」

「筒井さんも魔法少女になりたくなったら言って。僕でよければ手伝うよ」


 山越くんはそう言って微笑んだ。

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