第11話 腕時計

 隣の席の山越くんが腕時計をしていた。

 黄色いラバーの腕時計。言っちゃ悪いけど、いかにも安物。


「山越くん、その腕時計どうしたの?」

「ああ、誕生日プレゼントに友達から貰ったんだ」


 貰い物かぁ。友達がくれたなら、仕方ないね。

 というか山越くん友達いたんだ。


「まあ1000円ガチャのハズレ景品なんだけどね」

「そうなんだ……」

「昨日、着けてこいって言われてさ。友達も着けるらしいから、仕方なく着けてきたんだ」


 そう言って腕時計を見つめる山越くん。

 仕方なく、なんて本人は言うけどわざわざ着けてくるなんていい人だ。


「あぁ、傷が……なんだ汚れか」


 結構大切にしているみたいだし。山越くん、健気だ。


 私はお手洗いに行くために、席を立った。




 廊下を歩いていると、男子にぶつかってしまった。


「ごめん、大丈夫?」


 明るい茶髪の背の高い男の子。

 彼が私に手を差し出す。


「うん、大丈夫だよ」


 私が立ち上がると、彼の左腕に腕時計が見えた。緑色のラバーのものだ。


「やっぱ唐揚げにはオーロラソースだよな」


 ……うん。多分あれ、山越くんの友達だ。

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