第9話 世界一周道中

 昼休みも終わる頃、山越くんが呟いた。


「今日の昼ご飯はアクアパッツァか、マルゲリータか……」


 さっき焼きそばパン食べてたよね山越くん。もう昼休み終わっちゃうのに、そんな地図帳とにらめっこして何言ってんの。


「カルパッチョもありだな……」


 イタリア料理店にでも行くのかな?


「山越くん、どうしたの?」


 私が尋ねると、山越くんは真剣な顔で言った。


「僕今、イタリアにいるんだ」

「……ここは日本だよ山越くん」


 山越くんは地図帳を私に見せてきた。そこには赤いボールペンで線が引かれている。


「この動線で旅行をしてきたんだけど、そろそろお昼の時間なんだよね」

「そうなんだ……」


 いや、よく分からないけど。つまり、山越くんは脳内で旅行を楽しんでるってこと?


「ここから北上してスイス、ベルギーに行く予定なんだ」

「いいんじゃない?」


 山越くんが楽しそうなので私は野暮なツッコミはせずに、山越くんを見守ることにした。


「何かお土産の希望ある?」

「えっ」


 スイスからベルギーでしょ。なんだろう、何かあったっけ……?


「ちょ、チョコレートとか?」

「分かった」


 そう言って地図帳に向き直った山越くんは、赤いボールペンで何かを書くとにやりと笑った。

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