第2話 きれいな教科書

「一番きれいな教科書はなんでしょう?」


休み時間、唐突に山越くんが言った。山越くんの言葉は、独り言なのか私に言っているのか区別がつかない。


にしても一番きれいな教科書って何?

一番新しそうな数学?それとも授業数の少ない家庭科?いや、地理はあんまり先生が教科書使わないからきれいなままかも。


分からない。しかも山越くん、指で机をコンコンしだした。


「ちっちっちっち……」


これ何?私に答えてってこと?シンキングタイムを設けられてるの、私?

なんだろう、分からない。きれいな教科書なんて、人によるじゃん!


考えている間に先生がやってきた。

すると山越くんが机の中から化学の教科書を取り出した。


「やっぱり化学の教科書が一番きれいだよね……」


ふふふ、と意味深に笑う山越くん。次の授業は化学の授業だった。


山越くんの感性、分っかんねえ〜……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る