第10話



不気味な静けさが二人を包む。

四季の目には、深くフードを被り闇に紛れる姿が映る。



感情を読み取ることのできないその姿に、帝王は目を逸らすことなく、まるで相手の言葉を待っているようだった。





その視線に答えるように、感情のない低く冷たい声で静かに答えた。



「お前がそれを知ってどうする?」



「お前はあの事件とどんな関係がある?

これも依頼の一つなのか?

それともお前自身、単独の行動なのか?」



「今日はやけに饒舌じゃないか、京極四季」



そう言いながら口元に、綺麗な弧を作る。

その姿はまるで、全てを見透かしているようだった。


 


「それともう一つ気になる事があった。

烏は不気味な程綺麗な声をし、その綺麗な声で作られた言葉で人を操る。

そして最後はその口元に綺麗な弧を作り、そこには初めから何もなかったかのように姿を消す。」


「そして必ず烏が居た場所には、金木犀の残香だけが残っていると。」




「......」




烏はその言葉に無言で耳を傾ける。




「10年前、俺はある家族と家族ぐるみの付き合いだった、その家の庭には秋になると綺麗な金木犀が咲き乱れていた。


今でも覚えている、その金木犀に囲まれて家族3人で笑っている光景を。」




「烏、お前は「黙れ」」

 



それは牽制する声だった。

まるでこれ以上踏み込むな、そう言われているようだった。



だか、やっと探していたあの烏が目の前にいるのだ。四季も黙りはしない。




「烏、いやお前は莉衣 (りい) なのか?」


 


そう問いかけながら四季は足を動かし、手を烏へと伸ばそうとした。

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