第7話
四季はある場所を見上げていた。
「どうかしましたか?」
まだ整理が追いついていない右京だったが、
四季の事だ、何か理由があるのはわかっている、また後で詳しく聞けばいい。
自分にそう言い聞かせ、上を見上げる四季に言葉をかける。
「第三ビルだ」
そう言うと、第三ビルに向けて足を進める四季。
「第三ビルがどうかしたんですか?」
右京も同じように足を進め、第三ビルを見上げるも、そこにはただ暗闇が広がるだけだった。
四季が、その問いかけに答えることはなかったが、
「......右京、第三ビルの表と裏を塞げ」
それだけを言い残し、四季は歩みを止めることはなかった。
『第三ビルに何かあるのか?』
そんなことを思いながら、四季の後ろ姿を見つめる。
電話を取り出し、第三ビルの表と裏を塞ぐよう、指示を出す。
姿が見えなくなった四季を追うように、第三ビルに向けて足を動かしながらも、先ほどの四季の姿を思い出す。
他の人では気付くことはできないほどの、ほんの僅かではあったが、
一瞬だけ、口元が上がった気がした。
どんな時でも感情を表に出すことのないあの四季が。
「......」
胸騒ぎを覚えながらも、歩みを進める足を速めた。
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