第5話
ビルの屋上から静かにその光景を観ていた烏は考えを巡らせていた。
『......なぜ?』
そんな疑問を抱えながら、ここ最近の出来事を思い出す。
京極組傘下の月城組の、パソコンから、俺のパソコンにアクセスがあったのは2週間前。
月城組はここ最近怪しい動きをしていた。
京極組の傘下にも関わらず、京極組にとって御法度の薬にも手を出していたし、敵対している神楽坂組との接触も見られた。
だから、なんの疑問も疑いも持たなかった。
「よくある事だ」と、
俺を味方に付ける為に、俺の弱味を探し、俺に接触しようとしているのだと思った。
だから俺のパソコンに侵入しようとしている事に気付き、逆に返り討ちにしてやった。
いつものように見せしめの為に、月城組を潰したつもりだった。
バレないように上手く神楽坂組になりすまして、情報を流した。そうすればあの馬鹿な月城組が食いつくのもわかっていた。
だか、京極組もばかじゃない。
月城組の動きはあの臣が既に手に入れ、常に監視していた筈だ。
妙な動きがあれば、京極組が動く事も安易に想像ができた。
だから上手く事が運ぶように、月城組と京極組に情報を流したのだ。
そうすれば俺が出るまでもなく、京極組が月城組を潰してくれる事もわかっていた。
だが、まさか俺に探りを入れたのが月城組ではなく、京極組だったとしたら?
正直そこまでは考えていなかった.....。
月城組を潰してやろうと思ったのも、元々最近目障りだったのもあるが、神楽坂組からの指示だと思っていたからだ。
神楽坂組はここ最近、何度も俺に接触をしてこようとしていたが、神楽坂組は関西を拠点とする組だ。いくら力があっても、ここは関東を牛耳る京極組のテリトリー、そう易々と神楽坂組が足を踏み入れる事はできない。
だから月城組を使い、俺に接触を試みたのだと思っていた。
神楽坂組若頭、神楽坂 悠 (かぐらざか はるか)
どうもいけ好かない奴の顔を思い浮かべる。
柔らかい雰囲気を持ち、その顔にはいつも笑顔を貼り付けていた。
いつもその仮面の下には何かを隠し、何を考えているかわからない。
何度か会った事はあったが、アイツはどんな時でもその仮面を取る事はなかった。
「気味が悪い」その時でた言葉に、少し嬉しそうな顔をしたアイツの顔を思い出し、顔を歪める。
これは神楽坂組への、見せしめのつもりだった。
俺は絶対にお前らのものにはなるつもりはないと。
だからまさか帝王が俺を探っていたなんて、考えもしなかった.....。
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