第22話:種目

「あ、熱かった……」


 ゴールデンウィーク明け初日の授業が終わり、僕たちはいつも通り3人で帰っているところだった。


 あの空間だけはやめの夏かと思ったよ……。


「中1の頃はあんなに熱くなかった気がするんだけど……」


「あ、きりは中1までは学校頑張ってたっけ?」


「うん、そだよー! 褒めて?」


「ん、きりえらいね」


「ふへー……」


「高校の体育祭はやっぱり、The青春って感じだからね。盛り上がっちゃうの分かるなぁ」


 特にあれだよね。希望種目被ったときの男子たちのじゃんけん。世界の命運かかってるのかってくらいの気迫だよ、あれ……。


「2人とも、種目は希望通りだった?」


 男女別で決めたから知らないんだよね。


「んー、わたしは台風の目だけ」


「私は女子リレーと借り物競争〜!」


「お、きりも借り物競争なの?」


「え、そーたんも?」


「うん」


「ま、マジかぁ……同じかぁ……」


 あ、あれ……?


「思ってた反応と違ったな……?」


「いやだって……種目の順番的に、そーたんが頑張ってる間、私は次だから待機しておかないとでしょ?」


 借り物競争は、1つのクラスから4人チームを2つ作らないといけなくて、僕はAチームできりはBチームらしい。


 そして、今日の時点ですでに伝えられた当日のスケジュールでは、Aチームが行ったあとBチームが行われる予定だった。


 行われている種目の次に出る人は、入場門前で並んでおかないといけない。


 でも……それがどうしたんだろ……?


「待機中に動くわけにもいかないんだからさ……」


「う、うん」


「そーたんが私を借り物にできないじゃん!!」


「……うん?」


 いやそんな当たり前みたいに言われても……。


「えっと……借りないよ?」


「えっ……借り物競争って人を借りるのが醍醐味じゃないの!?」


「借り"者"じゃなくて"物"だからね?」



「あらー、もしかしてもうすぐ体育祭?」


 僕ときりがそんなことを話していると、僕たちの帰り道でよくお話をしているおばちゃんたちが、僕たちにそう声をかけた。


 初めてのときは、ゲームの話を部活と間違えられたけど、最近はたまに話しかけてくれて、すっごい気さくな人たち。


「あ、はい! あと2週間とちょっとであるんですよね〜」


「知らなかったわぁ……回覧板でお知らせしてくれたらいいのにねぇ……」


「あはは、あるとしても、もう少し時期が近づいてからじゃないですか?」


「たしかにそれもそうねぇ〜、今年はおばちゃんたちも見に行こうかしら?」


「ぜひぜひ! 白熱すると思いますよ!」


「ふふ、今から楽しそうでなによりだわぁ〜」


「はい、それはもう! ではこの辺でー!」


 あまり長く話していると、人付き合いに慣れてないきりとえいながもっと緊張するから、僕はちょっと強引ながらもそう言って礼をした。


「うふふ、彼氏としてかっこいいところ見せないとねぇ……」


 うんぐぅっ!


「彼氏じゃないですっっっっっ!!!!!!」

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