第8話:男子会 1

 時は流れて、早くも今週最後の登校日、金曜。


 授業はまだ中学の復習みたいな感じで、ちょっと退屈。だけど、きりとえいなは大変そうだけど……。


 まぁ、そんなこんなで昼休み。


「きりー、えいなー。学食行く?」


 僕は昨日までと同じく、2人に声を掛ける。が、2人は申し訳無さそうな顔を僕に向けてくる。


 あれ? おかしなこと言ったかな……?


「今日は──」


「あ、今日は彼女さん借りちゃっていいー?」


 すると、きりの後ろから首に腕を回しながら、1人のクラスの女子生徒が抱きついていながら言ってきた。


 栗崎くりさき紗良さらさん。とても明るい性格の持ち主で、きりとえいなには火曜日の初顔合わせから話しかけていてくれた。


 きりよりも鮮やかな茶髪を高い位置でポニテにまとめていて、いつもよく揺れている。


「お昼一緒に食べたかったんだよ〜!」


「えと……いい、かな?」


 えいなも僕にそう聞いてきてくる。


「え、う、うん! 全然いいよ!」


 僕は思わず、少し詰まるような回答になってしまった。


 一緒に食べれないのが嫌とかじゃなくて──いや、悲しいは悲しいんだけど──、自分の意思で僕以外と関わろうとしてくれてるのがめちゃくちゃ嬉しかったからだ。


「よーし、彼氏の許可もおりたし、一緒食べよ!」


「「うん!」」


 栗崎さんに連れられて、3人は食堂へと向かった。


「──つーことで、蒼汰はこっちな?」


 2人を見送っていると、誰かが僕の肩をガシッと掴んだ。


「や、やぁ祐希くん。一緒に食べてくれるのは嬉しいんだけど、ちょっとニコニコすぎて怖いなぁって……」


 僕が振り返るとニッコニコの祐希くんと、その後ろに凪くんと早乙女くんが椅子に座っていながら手招きをしていた。


 まぁ……他に食べる人いないし嬉しいんだけど!


「あ、でも弁当無い……」


「いーよいーよパンやるから」


「あほんと? ありがとー!」


 僕は祐希くんの隣の席に座りながら、祐希くんがカバンから取り出したパンを2つもらった。


 改めて「ありがと」と僕は伝えつつ、祐希くんはカバンから3個パンを取り出していた。


 ……え? パン5個? しかも潰れてないし……え? 四次元ポケット?


 僕がそんなくだらないことを考えていると、祐希くんが僕に話しかける。


「よし、パン受け取ったな。受け取ったからには俺たちの質問に全部答えてもらうからな」


「え」


 祐希くんはニヤリと笑う。えっハメられた?


「えー、では蒼汰被告。これより被告人質問を行わせてもらう!」


 祐希くんがガベルを叩く真似をするように机をドンドンと2回叩きながらそう言った。


「えー、それでは最初の質問だ」


「う、うん」


「さっき、紗良に『彼女さん』と言われて否定しなかったことについて弁明は……ないよなうん」


「裁判官! 弁明の機会くらいください!」


「要らぬだろうよこのハーレム被告め」


「会話を円滑に進めるためにツッコまなかっただけなんです!」


「ふーむ、検察官の凪と翔。どう思う?」


「「嘘だね」」


「裁判官! 僕に弁護人がいないんですが!」


「誰も付きたくなかっただけであろう! よって、被告人はハーレム罪に処す! 食らえ!」


 適当な裁判の真似事をして、最後に祐希くんがそう言うと、僕の脇腹に手を動かし──


 こちょこちょこちょこちょ


「あ、ははっ! ちょ……っ! 僕こちょこちょ弱いんだって、ちょあっはは!」


「おらおらー! これがクラスの総意だ食らえ!」






《あとがき》


些細な違いですが、きりの一人称を「私」、えいなの一人称を「わたし」に変更しました……!

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