第25話:5人で練習
その週末、金曜日の放課後。僕たち6人は高崎高校に来ていた。
えいなはあのあと、僕の言葉が響いたのかは分からないけど、残りの4人にも軽く過去のことを打ち明けた。
つまり、今日集まったのは体育祭の練習ってこと!
「よーし、じゃ早速始めるか!」
祐希くんが「おー!」と言いながら拳を突き上げた。
「走るのが苦手って言ってたけど、試しに少し走ってみることはできる?」
早乙女くんはそんな祐希を見て小さく笑いながら、えいなに問いかけた。
「う、うん」
やっぱり走るのを見られるのは、誰であってもまだ少し緊張してるみたい……。
「頑張って……!」
だから、僕はそう声をかけた。
するとえいなは僕の方を見て、少し頬をゆるめて「……うん」と頷いた。
えいなはブランコから鉄棒まで──だいたい30mくらいを全力で走った。
「はぁ……っふぅ……」
「ん。お疲れ」
「ありがと……」
「うーん、なるほどな……」
そのフォームを見た祐希くんと早乙女くんが何かを話し合い始めた。
あ、ちなみに、祐希くんは高校ではなんか用事があるとかで帰宅部だけど、中学まではバスケ部のエースだったみたい。
なんでも、弱小校だったけど県大会出場まで導いた貢献者だとか……。
そして、早乙女くん。早乙女くんは中学、高校、どっちもサッカー部所属で、中学ではエース、高校ではもうスタメンの座を獲得したみたい……!
2人とも、運動の申し子的な存在なんだ……!
いやほんとに羨ましい……。
「──ま、結局はそこか?」
「だね」
すると、2人の意見がまとまったみたい。
「えっと……いなっちって過去に転んでちょっと大きな怪我したーとかってあるか?」
そういえば、祐希くん、凪くんは2人のことをいなっちときりりって呼んでるんだよね。
「怪我…………あ、小学生の頃に1回」
「お、ビンゴ」
「ビンゴ……?」
「えいなさんの走り、転ぶのを恐れてる感じがしたんだよね。なんていうか、転んでもすぐに手を付けるように、みたいな」
あ、そういえば……。
前に通話してたときに、「こけたときに笑われたのがつらかった」的なこと言ってたような……。
なるほど……ここにも過去が影響してくるんだ……辛かっただろうね……。
「といっても、難しいよなぁ……。実質、走り方を矯正するようなもんだから」
「そうなんだよね。意識と走り方、その両方を矯正するんだから……」
「──でも、頑張る……っ!」
2人の言葉にえいなはそう決意を示し、僕の方を見た。
その視線は、先日の僕の言葉がちゃんと伝わっているようにも思えて、少し嬉しかった。
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