第4話:登校
昨日も日付が変わる前には通話を終わり、僕は次の日の朝を迎えていた。
今日はオリエンテーションだけなので、筆箱や水筒以外は特に準備する必要もなかった。
せっかくだし、今日もはやめに公園に行っておこうかな。
そう思った僕は、昨日と同じく7時半に家を出た。
「さむ……今日は冷えてるなぁ……」
冬用の制服でもちょっと寒く感じるくらいには冷えていた。
寒ー、と思いながら公園の中に入っていくと、ブランコに2人の女子生徒がいるのが見えた。
きりとえいなだ。今日はすっごい早い。
「おは……ふわぁ……ふぅ……」
挨拶しようとしたのにあくびと被って変な感じになっちゃった。
「あはは、そーたん言えてないよー! おはよ!」
「ん……おはよ、そーた」
「今日は早いんだ」
「まぁね〜!」
「きりと昨日……明日は、早くって……話した。わたし頑張った、よ?」
表情は変わらず、ぶい、と言いながら僕にピースを向ける。めちゃくちゃ可愛かった。
「昨日はそーた……待たせちゃった……から」
うんうん、いい成長だ。たった1日で──。
「それもあるけど、私、はやくそーたんに会いたくて」
「む、それは……わたしも同じ」
「ぶっ……」
急にそんなことを言われて、僕は変な声が漏れてしまった。
『早く会いたくて』って……ちょっと……可愛すぎる。
い、いやでもこれは、いつも「はやく一緒にゲームしたかったんだ〜!」って言ってくるのと同じ感じなんだろう!
そういうことにしないと僕が耐えられないので、無理矢理そう思うことにした。
きりも純度100%の笑顔だし、僕の考えすぎか!
ただの付き合いが長いネッ友、だもんね!
で、でも──。
「……それはちょっと恥ずかしいので、言うとしても3人だけのときにしてください」
「え、恥ずかしいって…………っ! ち、ちが……そうじゃなくて!!」
「いやうん! 大丈夫! 分かってるから!!」
「? わたしはほんとに……そーたに会いたかった、よ?」
「ちょ……えいな……!」
「?」
えいなは2人がなぜ慌ててるのか、ほんとに分からずにただ首を傾げてるのであった。
◇◆◇
今日も大量の視線を浴びつつ、なんとか学校にたどり着く。
えっと、今日はそのまま教室に、って昨日言ってた気がするし、1組に行っちゃっていいんだよね。
ガラガラガラ。
僕が3人で教室に入ると、まだ人はほとんどいなかった。
それもそっか。今日は早かったからね……って!
「あ、凪くんおはよう!」
「ん? あ、蒼汰くんおはよ。早いね」
僕は凪くんの姿を発見したから、ちょっと話しかけに行った。
きりとえいなは僕以外の人のもとに行くのがまだ怖くて、少し立ち止まってしまうが、取り残される方がもっと嫌だったので、僕の後ろについてくる。
なんなら、2人とも僕のブレザーの裾を軽くつまんでる。
それはちょっと恥ずかしいからやめてほしいような……。
「何読んでたの?」
「『公園で泣いてる少女を助けたら、実はお嬢様だった件』っていうラノベだけど……うんごめんオタク趣味すぎたか」
なっ……こうじつ……だと……!?
僕はえいなに視線を向けると、やはりと言ったように目の奥を光らせていた。
こうじつは、えいなの大好物だからね。
「凪くん、も……こうじつ、好き……?」
「えと、瑛奈さんだっけ? 最近めちゃくちゃハマってるんだよね! 特にこの──」
凪くんとえいなが楽しそうにオタク談義をしているのを見て、僕は嬉しい気持ちになった。
人も選ぶし、内容も限定的だけど、僕以外の人と話せるようになったのが、どうしようもなく嬉しいんだ。
でも、裾を掴むことをやめないことから、僕が近くにいないとまだ怖いってことが分かってきて、微笑ましく思った。
その後、オリエンテーションは滞りなく進んだ。自己紹介がちょっと不安だったけど、トップバッターの祐希くんが、
『そこのバカ村凪と朝一緒に行こうって話してたのに、昨日俺がゲームで勝ったせいで置いていかれた青山祐希だ! 許さね──じゃなかった、よろしくお願いしますわね、おほほほほほ!』
と笑いをとってくれたおかげで、クラスの雰囲気も和らぎ、2人の緊張も解けたので、なんとか言うことができた。
ちなみに、席は出席番号順で、『あ』『う』『お』『か』の僕たちはめちゃくちゃ近かったけど、『よ』の凪くんだけ正反対で泣いてました。
「はっはー! バチが当たったのぅ凪よ!」
「…………」
「いて、無言で殴んないでもらって!」
早速2人と仲良くなれたし、きりとえいなもなんとか不登校にならずに過ごせそうでよかったよ!
そうして、今日もすべての予定が終わった。
「蒼汰ー! RINE交換しようぜー!」
「あ、うん!」
「そっちの2人……はまだ厳しいか……」
放課後、友達づくりに励んでいる教室で、きりとえいなにも積極的に話しかけてくれるが、朝の例外以外はまだ僕以外と話すのは怖いみたい。
っていうか、『まだ厳しい』って……ある程度2人のこと察してくれてるのかな?
「うん、ごめんね」
「大丈夫だ! ゆっくりと慣れていこうぜ! 俺もゲーム好きだしな!」
自己紹介でゲームが好きって言ったのを覚えててくれたみたい。
「んじゃ、俺たちは先に帰るなー! おらぁ凪! 今日もボコボコにしてやるぜぇ!」
「1勝くらいするから見てなって……!」
「よし、じゃあ僕たちも帰ろっか!」
「うん!」
「ん……!」
……気にしないようにしてたけど、やっぱりクラスメイトからも視線すごいな……。
まぁ……こんな美少女が2人も同じクラスにいたら、そりゃあ見ちゃうよねー……。
僕は2人をちらっと見ながらそんな感想をこぼす。
2人は何のことか分かってないような顔をしていた。というか、不登校だったからほんとに理解してないんだろうなぁ。
でも1つ問題点があるのです。
(ぼ、僕への殺意のこもった視線がヤバい……)
明らかに「コロスコロスコロスコロス」と念のこもった視線が僕に飛んできているのだ。
こ、これは早々に離脱しなけれ──。
「……あ」
「ん?」
「……今日、たくさん人いて疲れたから、手繋いで帰ってほしいな、なんて……」
「……! なら、わたしも……!」
………………。君たち……。
「「「「「!?!?!?!?!?!?!?!?」」」」」
まだここ、教室なんだよおおおおおおお!!!!
《あとがき》
お読みいただきありがとうございます(>ω<)
明日より1日1話更新となります!
もっと多くの方に見てもらいたいので、☆☆☆やフォロー、❤をよろしくお願いします!
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