第3話:はっず!
午前10時。入学式、クラス分けが終わり、今日の予定は終了となった。
クラスメイトと担任との顔合わせなど、そういうのはまとめて明日あるらしい。
なので、僕ときりとえいなは一緒に帰路についていた。
「ふ〜! やっとそーたんとえいなだけだー!」
「やっぱ、まだ人が多いのは厳しい?」
「うん……その、過去のことをどうしても思い出しちゃって」
きりは目に少し涙を堪えながら、軽く俯いて言った。
大丈夫だよ、などかける言葉はいろいろあっただろうが、今は外である。話しづらいこともあるだろうし、僕は強引にでも話題を変えることにした。
「そういえば、昨日の最後の試合やばかったね」
「ね! そーたん最後マジでうますぎ!」
「最後……ちょーかっこよかった、よ?」
「で、でしょ」
僕はつい歯切れの悪い返事になってしまった。
通話越しに褒められるのはいいけど、こんな美少女から「かっこいい」って言われるのはさすがに照れる……。
「あらあらぁ……部活の試合かしらねぇ」「この時期に大会あるんだね」「あの男の子、かっこいいところ見せれたみたいねぇ」
僕たちの会話が聞こえたおばちゃんたちが、盛大に勘違いしていた。
ごめん、めっちゃゲームなんだ……。
◇◆◇
僕の家のマンションのエントランス前に着いた。
「ん、ここからなら帰り道分かる?」
「多分……」
「なんとか……」
「まさかの1人も自信ある人がいないっていうね」
僕は「なきりとえーみらしいね」と小さく笑う。
と、そこで僕はあることが頭によぎったので彼女たちに聞いてみた。
「あ、僕んち寄ってく? ちょうど昨日母さんがおいしいパン屋の買ってきてくれて──」
そこまで言ったところで、2人が僕から目を逸らしているのに気づいた。なんか、顔がちょっと赤いような……。
「ん? どーした?」
「あ、あぁいや、そ、その……今日はママがもう作ってくれてるらしいから!」
「わ、わたしも……お母さん、が、作ってる……からっ!」
「お、おう……そうか」
すごい勢いでそう言われちゃったからには、頷くしかなかった。というかその勢いのまま頷いた。
「「じゃ、またあとで!!」」
「あ、うんまたあとで」
また明日、どころか今日中にはまた話してくれるってことで声がハモってるの、ちょっと嬉しい。
っていうか、嫌われたわけじゃないってだけで嬉しいな……。
何がいけなかったん──。
「あ」
僕、異性の家に誘ってた……?
家に入った僕は、制服も脱がずにそのまま布団にダイブ。
そして。
「あああああ!!!! はっっっっっず!!!!」
近所迷惑にならないようにめちゃくちゃ叫んだ。
余談だが、僕の顔もめちゃくちゃ赤くなってることに気づくことは無かった。
ちなみに、この3時間後。
いつもの様子で『ゲームしよ!』と誘われたので一緒にApaxをしたが、3人とも終始照れていたのでだった。
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