第26話
ただそれもしばらくの間だけで、期間限定の神隠しのようなものだと告げられた。どのくらいの期間になるかわからない。いずれ自分自身で向き合わないといけないとも。
左京さんの話を理解はできていない。でも、もうわたしに失うものはないのだ。わたしは奈落の底から助けてくれた彼を信じることにした。
『僕は絶対に小春の味方です。それは覚えておいてくださいね』
優しい目で見つめられて、胸がきゅんとした。
左京さんが味方でいてくれる。それがとても心強かった。
今は人生のお昼休み。しばらくここで心身を癒したら、自分の力で未来を切り開くんだ。
――愛なんて幻みたいなもの。
わたしはそう思って十八年間生きてきた。でも、大切にしてもらえる喜びを彼が教えてくれたから。
『どうして左京さんはそんなに優しいんですか? わたしを前から知っていたの?』
『僕は優しくないですよ。いろんな事情は小春が元気になったら話しましょう』
思い切って聞いてみたけど、やっぱり答えてもらえなかった。
カウンターの中に戻る左京さんの背中を見ながら思い出していたら、鬼蝶さんが小声でささやいてきた。
「左京のことが気になる? どうせろくに説明してもらってないんでしょ?」
「は、はい」
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