第22話

「憧れ?」

「家族と食べる二日目のカレー、いいなって。その、家族とごはんを食べたことがないから……」


 心の中の思いをついこぼしてしまった。

 左京さんがカウンターの中から出てきて、隣の椅子に座る。


「左京さん?」


 スプーンを置いて、彼を見上げる。

 背が高い。腕も長い。その腕が伸びてきて、頭をぽんぽんとなでられた。

 手のひらも大きい。


「このカレーの隠し味がなにか、わかりますか?」

「いいえ」

「いろいろ工夫はしていますが、一番表に出ているのはりんごですね」

「あ、甘酸っぱい味はりんごだったんだ」

「そうです。当たり」


 ほめるように、また頭を優しくぽんぽんする。

 子供扱いされているのに、なんだかうれしかった。ふれているのは手のひらだけなのに、左京さんのぬくもりに包まれているみたいな心地になる。

 左京さんは穏やかに微笑んだ。


「でも、それだけじゃなくて、僕の気持ちも入っているんですよ?」

「気持ち?」

「ええ。あなたに喜んでほしい。もっと幸せになってほしい」

「わたしに……?」

「ここが、あなたの心のふるさとになれたらいい。そんな想いが」

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