第20話

わたしを取り巻く状況はなにも変わっていないけれど、重い石を抱えているようだった気持ちが少し軽くなる。

 うつむくわたしの耳に、左京さんの穏やかな声が忍び込んだ。


「どうぞ召し上がれ」


 渡されたハンカチで涙をぬぐって、カウンターの上を見る。

 そこにあったのは、カレーライス。


「わあ、なんてかわいいの」


 カレーはカレーなんだけど、とってもキュートだ。いろんな野菜が飾り切りされていて、お皿の上がお花畑みたいに見える。

 スプーンですくうと、カレーはもったりとしていた。スープカレーやドライカレーではなく、インドとかタイのエスニックなカレーでもない。日本の家庭や給食で、ごく普通に出てきそうなカレーライス。

 ぱくりと食べると、複雑な香りが鼻の奥に抜ける。まろやかで豊かな辛みが口の中に広がった。


「すごくおいしい」


 きっとだれもが懐かしさを感じるカレーの味。でも、それだけじゃなくてプロの技もあるのだろう。辛いんだけど、フルーティーな甘酸っぱさもある。

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