第19話

わたしが絶句していたら、左京さんがいたずらっぽい目で微笑んだ。


「なにも覚えていない小春にとっては突拍子もない話でしょうが、信じてください。僕が必ずあなたを守りますから」

「守って……くれるの?」

「もちろん。小春は僕の――いや、今はやめておきましょう」


 左京さんが料理をする様子を呆然と見つめながら、彼の言葉を反芻していた。

 突飛な話だ。『時が止まる』なんて、現実とフィクションの区別が付かない人なのか、わたしをからかっているのか、どっちかだろう。

 でも、なぜか目の奥がちくちくしてきて困ってしまった。まずいと思ってうつむくと、さらにまぶたが熱くなって涙があふれる。


「んっ……ん、ううっ」


 一生懸命声を抑えても、きっと気づかれてる。昨日初めて会った人。突然倒れて迷惑をかけてしまった左京さんに、また醜態をさらしてしまう。我慢しなくちゃ。

 そう思っているのに、涙は止まらなかった。


 ――わたし、守ってもらえるんだって。


 嘘でも社交辞令でも、そんなことを言われのは初めてだった。両親からだって守ってもらった記憶がない。

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