第18話
そう言われて空腹を思い出した。とたんにぐ~っとおなかが鳴る。
カフェスペースの入り口に置かれていた靴に履き替え、左京さんが指差したカウンターチェアに座る。ドアを開けたときから漂っていたスパイスの香りが鼻先に押し寄せてきた。昨日橋の上でしていたのと同じ香りだ。
「カレー、ですか?」
「一番人気のランチメニューなんですよ。ブランチにいかがですか?」
「ありがとうございます。いい匂い。あの、ほかのお客さんは? お邪魔じゃないでしょうか?」
こんなおしゃれなお店なのに、店内にはだれもいない。もうランチタイムなら、なおさら不思議だ。
洗い物をしていた左京さんがこちらを見ずにさらりと告げる。
「今日は臨時休業にしました。お客さんはあなただけです。ゆっくりしてくださいね」
「え? わたし、そんなにご迷惑をおかけするつもりは……」
「僕が勝手にやっていることです。小春は気にしないで」
「でも」
「今のあなたには休養が必要です。外の世界の〝時〟は止まっているから、安心していいですよ」
「……はい?」
外の世界? 時が止まっている?
突然妙な言葉が聞こえてきたけど、空耳?
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