第17話

「左京さん、相談に乗ってくれないかな」


 不思議な人だけど、わたし自身よりはよほど頼りになりそうな大人だ。少しだけ甘えてもいいかしら。


 よく磨かれた木造の階段を降りていくと、そこは四畳半ほどのホールになっていて、扉がふたつあった。ひとつは玄関だ。もう片方がさっき左京さんの言っていたカフェの入り口っぽい。

 階段と同じく木目の美しい扉を開けると、コーヒーと、おいしそうなスパイスの香りが漂っていた。やっぱり、ここが左京さんのカフェなんだ。

 落ち着いたダークブラウンで統一された家具に、アンティーク調のインテリア。小さな音でピアノの曲が流れている。とても居心地のよさそうな空間だった。

 カウンターのうしろにいた左京さんが、わたしを見つけてにっこりと笑った。


「小春。カフェレストラン『月夜のお茶会』へようこそ」

「はい!? お、お邪魔します」


 いきなり呼び捨て!? ずっと丁寧語だったのに呼び方だけフレンドリーでびっくりした。

 戸惑うわたしにかまわず、彼はキッチンで作業をしながら片手で手招きをする。


「おなかが空いているでしょう。もう昼近い」

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