第15話
心臓がぎゅっとなったけれど、今は考えたくなかった。とりあえず後回しにして、目の前の人への疑問を口にする。
「左京さんはなんでわたしを知っていたんですか? 名前や――あ」
そのとき、わたしの質問を遮るようなタイミングで、一階から澄んだチャイムの音が響いた。
左京さんはすまなそうに目じりを下げた。
「ああ、すみません、取引業者の配達です。この部屋の隣が洗面所なので、自由に使ってくださいね。あと、クローゼットに衣類が入っています。適当にそろえたものだから、今度あなたの好みの服を買いに行きましょう」
「服? そういえば……」
はっと気づき、両手を広げて自分を見る。わたし、高校の制服のままだ。
セーラー服はしわくちゃになっていた。とっさにアイロンをかけなきゃと焦ったけれど、すぐに昨日卒業式だったのを思い出した。もうセーラー服は必要ないんだった。
「顔を洗って着替えたら、下においで。朝食を作ってあげますから」
音も立てずにドアを開け閉めして、左京さんが出ていった。
わたしは頭を振った。まだぼうっとしている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます