第14話

「えっと……わたし、どうしてここに? あの、あなたは?」

「そういえば、自己紹介がまだでしたね。僕は王隠寺左京」

「おういんじさん?」

「大仰な名字ですよね。左京と呼んでください」


 少し不安が込み上げてきたところに、昨日と同じ優しい微笑みを向けられてほっとした。


「……左京さん。実は、記憶があいまいで……橋の上であなたと会ってからのこと、覚えていないんです」

「そうですか。突然眠ってしまいましたからね。その前に『どこにも帰りたくない』と泣いていたので、ここに連れてきてしまいました」

「わたし、寝ちゃったの……? あ、ここまで運んでくれたんですよね。ご迷惑をおかけしてごめんなさい」

「疲れていたのでしょう。それからぐっすりでした。よく眠れたのならなによりです」


 どうやらわたしは彼の腕の中で気絶してしまったらしい。突然家を追い出された衝撃やこれからの生活への不安で、いっぱいいっぱいになっていたのかもしれない。


 そういえば、秋野の家や石山さんはどうなったんだろう。わたしは家出扱いになっているのかしら。

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