第7話

出ていけって、どういうこと?

 たしかにわたしは母と血がつながっていない。母に頭の上がらない入り婿の父が、息抜きに浮気をしたら運悪くできてしまった不義の子なのだ。

 母は秋野家の世間体を守るため、父と愛人の手を切らせ、生まれたばかりのわたしを養子にした。

 そんな立場のわたしを高校まで行かせてくれたのは感謝しているし、恩返しをしなければとも思っている。けれど、家を出ろという話をされたのはこれが初めてだった。


「あなたの荷物はまとめて先方に送っておきました。あちらさまも身ひとつで嫁いでくればよいとおっしゃっています」

「でも、結婚式の予定はまだ決まっていませんが」

「まあ、おこがましい。愛人の娘のくせに、秋野家のお金で結婚式をするつもりでいたのですか」

「……すみません」


 秋野家のメンツのためにも結婚式はすると思い込んでいた。

 わたしの婚約者は、石山いしやま健太郎けんたろうさんという資産家だ。一昨年奥さんを亡くした六十八歳の男性で、県議会議員である父の後援会の会長をしている。

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