第4話

「じゃあ、お店の前を掃除してきますね」

「ああ、気をつけて」

「気をつけるって、なにをです?」

「知らない人に声をかけられても付いていかないように」

「わたし、子供じゃありませんから!」


 左京さんまで子供扱いするなんてひどい。

 わたしはぷりぷりと怒りながら、メイド服の上にニットのアウターを羽織った。

 ちなみにメイド服はわたしの趣味で着ている。ここで働きはじめたとき左京さんにお願いして、モノトーンのエプロンドレスを制服にしてもらった。

 これまでこういうかわいらしい洋服と縁がなかったので、思い切ってわがままを言ってみたのだけど、好きな格好で過ごせる毎日はすごく楽しい。


 ほうきを持って外に出ると五月の軽井沢はまだ肌寒くて、慌ててアウターのボタンをとめる。


「朝の空気は気持ちいいなあ」


 こぢんまりとしたたたずまいのカフェは、明るい森の中にある。見上げると、美しい新緑の木々の葉がきらきらと輝いていた。

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