第3話

女性にとっての危険物だわと左京さんをジト目で見ていたら、お客さんがあきれたようにため息をついた。


「犬も食わない痴話げんかはそのへんで。小春ちゃん、ブレンドを頼むよ」

「はーい! 左京さん、ブレンドひとつ。おいしいやつね!」


 からかわれたのが恥ずかしくて、ふざけた口調でオーダーを通す。左京さんはしょうがないなというように肩をすくめた。


「僕のコーヒーはいつもおいしいですけどね」

「ふふっ」


 優しくてかっこいいオーナーと、ふらりと訪れる常連客の皆さん。香り高いコーヒーとおいしいランチに気の置けない会話。

 これがカフェ『月夜のお茶会』の日常だ。

 とても素敵なカフェなんだけど、来客は少ない。どうして経営が成り立っているんだろうと不思議になることもある。

 たぶんディナーで稼いでいるんじゃないかな? お酒も出すから若い女の子を働かせたくないと左京さんが主張するので、わたしのシフトは夕方までなのだ。

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