第2話 同様に確か

「君も物好きだね。天国じゃなくて僕といたいだなんて」

「そりゃ科学者として、聞いてみたいことは山ほどあるんだ」

「でも、ごめんね。僕もそんなに暇ではないからさ。ほら、次の死者がもうすぐ来るって」

「え? ああ、そうかまだまだ聞きたいことがあるのだが……」


 結局、科学者は天国を望まなかったのだ。 

 真理の精通していそうな創造神に一応の答えを聞き、確信を持って理論を構築するようになると、生前を上回るペースで証明が思いつけたからだ。


「暇させちゃ悪いだろうから、これで遊んでなよ」


 そういうと創造神はサイコロを一つ創り出した。

 立方体型の6面あるもの。

 1を表す面が赤く凹んでいるから日本式のデザインだ。


「それ、全ての出目が同様に確かだから」

「なんだって?」

「はは、君も同じ反応をするんだね」


 過去にも同じやり取りをした科学者でもいたのだろうか。

 創造神はにこっと笑って、そのままどこかへ消えてしまった。

 そういえば彼? は歩かない。不意に消えては現れるのだ。


「同様に確かなんて空想上の産物だが、いや、彼ならできるのか?」


 サイコロの出目は六分の一と考えることが多いが、実際の出目はそう言うわけにはいかない。

 重心が正確に真ん中にくるサイコロなどありはしないし、一度振った瞬間から摩耗して、重心はずれていく。


 男はそんなことありえるのかと思いながら、確かめることにした。

 試行回数は何回がいいだろうか。

 男は振り続けた。


 賽を投げること3,000万回。

 結果は2から5の目がちょうど500万回。

 1の目はそこから+1、6の目は-1の誤差だった。


「なるほど、同様に確からしい」


 そして男は思った。

 創造神はなぜ自分の分身を創造して楽をしないのだろうか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る