第20話 アユタヤへの珍道中!
瑠奈は、初めての会社の有給休暇を利用して友達と旅行に行く計画を立てようと、カフェでスマホを眺めていると、突然、頭の中で声が響いた。
「瑠奈よ、アユタヤへ行きたいぞ!」
それは、瑠奈の頭の中に住む戦国武将・山田長政の声だった。ソムタム事件以来、瑠奈の頭の中には長政の魂が宿り、ことあるごとに武士道精神を説いたり、昔の話を聞かせたりしてくるのだ。
「えー、なんで急にアユタヤ? 今どきアユタヤって、ちょっと地味じゃない? 海とか、プールとか、もっとインスタ映えする場所がいいんだけど…」
瑠奈は、流行に敏感なZ世代女子。歴史的な遺跡よりも、最新のトレンドスポットに興味がある。
「何を言う! アユタヤは、かつてわしが活躍した地であり、日本人町があった歴史的な場所じゃ! 是非とも、お主にその栄光を見せたい!」
長政は、興奮気味にアユタヤの魅力を語り始めた。瑠奈は、長政の熱意に押され、渋々アユタヤ行きを承諾することにした。
「しょうがないわね… でも、アユタヤに行くなら、私の条件があるわよ。レンタカーじゃなくて、キャンピングカーで行くこと!」
瑠奈は、最新のキャンピングカーに興味津々だった。快適な車内で旅行ができ、インスタ映えもバッチリだ。
「キャンピングカー…? まあ、よかろう。わしの時代にはなかった便利な乗り物じゃ。喜んで乗らせてもらおう」
長政は、意外にもあっさり承諾した。
こうして、瑠奈は、親友のレディーボーイ、ソムと、日本語を話すタイ人留学生のケンを誘って、アユタヤ旅行に出かけることになった。もちろん、頭の中の山田長政も一緒だ。
1. 渋滞!長政、現代の交通事情に激怒!?
バンコク市内からアユタヤまでは、車で約2時間。しかし、一行がレンタカー会社で借りたのは、最新式の豪華なキャンピングカーだった。
「うわぁー! 広くて綺麗! これなら快適に旅行できそう!」
瑠奈は、キャンピングカーの広々とした車内を見て、大喜びした。キッチン、トイレ、シャワー、ベッドまで完備されている。まるで、動くホテルのようだ。
「ほう… なかなか面白い乗り物じゃのう。わしの時代には、馬か駕籠しか移動手段がなかったからのう…」
長政は、キャンピングカーの設備に興味津々だった。
一行は、意気揚々とバンコクを出発したが、すぐに予想外の事態に遭遇する。高速道路が大渋滞していたのだ。
「な、なんだこれは!? なぜ、こんなに多くの車が…」
長政は、窓の外を埋め尽くす車の列を見て、驚愕した。
「長政さん、これが現代の交通事情よ。特に、休日は渋滞がひどいの」
瑠奈は、スマホで渋滞情報をチェックしながら説明した。
「ううむ… わしの時代にも、参勤交代などで大名行列が街道を埋め尽くすことはあったが… これは、まるで戦のようじゃ!」
長政は、車内で落ち着きなく動き回り始めた。
「長政さん、落ち着いて! 渋滞は、現代社会の宿命なのよ。気長に待つしかないわ」
瑠奈は、長政をなだめながら、キャンピングカーの冷蔵庫から冷たい飲み物を取り出した。
「そうじゃ… わしも、焦ってはいかん。戦には、忍耐も必要じゃ」
長政は、瑠奈から飲み物を受け取り、気持ちを落ち着かせようとした。
2. サービスエリアで迷子!?長政、現代社会に困惑!
数時間後、ようやく渋滞を抜け出した一行は、高速道路のサービスエリアで休憩することにした。
「わあ! いろんなお店がある! トイレも綺麗!」
瑠奈とソムは、サービスエリアの充実した設備に感動していた。
「瑠奈よ、ちょっとトイレに行って来るわ。長政さん、ちょっと見てて」
瑠奈は、トイレに向かう前に、長政にソムとケンの見張りを頼んだ。
「うむ、任せておけ!」
長政は、自信満々に答えた。しかし、瑠奈がトイレから戻ってくると、ソムとケンの姿が見当たらない。
「あれ? ソムとケンはどこ?」
瑠奈は、辺りを見回しながら、長政に尋ねた。
「う… うむ… ちょっと目を離した隙に…」
長政は、バツが悪そうに答えた。
「えー!? マジで!? 長政さん、しっかりしてよ!」
瑠奈は、慌ててソムとケンを探し始めた。
「こ、これは… 広すぎて、どこにいるのかわからん…」
長政も、サービスエリアの広さと人の多さに圧倒され、困惑していた。
「仕方ないわね… ケンのスマホに電話してみるわ」
瑠奈は、ケンのスマホに電話をかけ、ようやく彼らの居場所を突き止めた。彼らは、お土産コーナーで、タイの伝統的なお菓子に夢中になっていたのだ。
「もう! 二人とも、勝手に行動しないでよ! 心配したんだから!」
瑠奈は、安堵と怒りが入り混じった表情で、ソムとケンを叱責した。
「ごめん、瑠奈。つい、美味しそうなものを見つけてしまって…」
ソムは、悪びれる様子もなく、笑顔で答えた。
3. 道に迷う!長政、昔の地図と現代の道路に大混乱!
サービスエリアを出発した一行は、再びアユタヤを目指して走り始めた。しかし、ナビゲーションシステムの調子が悪く、道に迷ってしまう。
「あれ? この道、合ってる? なんか、景色が変なんだけど…」
瑠奈は、不安そうに周囲を見回した。
「むむ… わしの記憶では、このあたりは…」
長政は、昔の地図と現代の道路を照らし合わせながら、頭を悩ませていた。
「長政さん、昔の地図は役に立たないわよ! それに、長政さんが知ってるアユタヤは、400年以上前の姿よ! 今は、街並みも道路も全然違うわ」
瑠奈は、長政の言葉を一蹴した。
「ううむ… そうか… わしの時代は、まだ舗装された道路もなく、道も狭かったからのう…」
長政は、時代の流れを感じ、少し寂しそうに呟いた。
一行は、スマホの地図アプリと、地元の人々に道を尋ねながら、なんとか正しいルートに戻ることができた。
4. キャンピングカー故障!?長政、武士の魂で修理に挑戦!
アユタヤに近づくにつれて、道路は混雑し始め、キャンピングカーのエンジンから異音が聞こえ始めた。
「あれ? なんか、変な音がする…」
瑠奈は、不安そうに言った。
「やばい! エンジンがオーバーヒートしてるみたい! 近くに修理工場とか、ないかな…」
ケンは、慌ててスマホで近くの修理工場を探し始めた。
「これは… 一大事じゃ! 瑠奈よ、落ち着くのじゃ! わしが、なんとかして見せる!」
長政は、武士の魂を見せようと、意気込んだ。
「長政さん、これは機械の故障よ! 武士の魂で直せるわけないでしょ!」
瑠奈は、長政の言葉を呆れて聞き流した。
「むむ… そうか… わしの時代には、こんな複雑な機械はなかったからのう…」
長政は、現代のテクノロジーに圧倒され、肩を落とした。
結局、一行は、レッカー車を呼んで、近くの修理工場にキャンピングカーを運んでもらうことになった。
5. 宿泊予定のキャンプ場が…!?長政、現代のレジャーに驚き!
キャンピングカーの修理が完了するまで、数時間かかる見込みだった。一行は、近くのキャンプ場で時間を潰すことにした。
「わあ! 広くて、景色もいい! バーベキューができるところもある!」
瑠奈は、キャンプ場の充実した設備に感動していた。
「ほう… これは、なかなか面白い場所じゃのう。わしの時代には、野営といえば、戦場でのことだったからのう…」
長政は、現代のレジャーとしてのキャンプに驚きを隠せない様子だった。
一行は、テントを設営し、バーベキューを楽しんだ。瑠奈は、スマホで写真を撮ったり、SNSに投稿したりして、キャンプの様子を満喫していた。
「瑠奈よ、その小さな箱は何じゃ? なぜ、それでわしの顔を写しとるのだ?」
長政は、瑠奈のスマホに興味津々だった。
「これは、スマホっていうの。写真も撮れるし、インターネットにも繋がるし、いろんなことができるのよ」
瑠奈は、長政にスマホの使い方を説明した。
「ほう… 便利な世の中になったものじゃのう…」
長政は、現代のテクノロジーに感心していた。
アユタヤ到着! しかし…?
やっとの思いでアユタヤに到着した瑠奈たち。キャンピングカーを駐車場に停め、歴史公園へと足を踏み入れる。目の前に広がる遺跡群に、瑠奈は思わず息を呑んだ。
「わあ… すごい…!」
崩れ落ちた仏塔、苔むした石像、かつての王宮の跡… 400年の時を超えて、そこに歴史の重みが感じられる。
「瑠奈よ、これがアユタヤじゃ! かつて、わしがこの地で…」
長政は、興奮気味にアユタヤの歴史を語り始めた。しかし、瑠奈の視線は、遺跡ではなく、近くの屋台に向けられていた。
「ねえ、長政さん。マンゴーかき氷食べに行かない?」
「かき氷…? なんじゃ、そりゃ?」
長政は、瑠奈の言葉に首を傾げた。
「タイの定番スイーツよ! めっちゃ美味しいんだから!」
瑠奈は、長政の言葉には耳を貸さず、屋台へと駆け寄っていった。ソムとケンも、その後を追いかける。
6. 歴史よりスイーツ!? 長政、現代っ子の感覚に呆然…
瑠奈たちは、屋台のマンゴーかき氷を堪能していた。
「ん~! うまーい! やっぱり、タイに来たらマンゴーかき氷よね!」
瑠奈は、幸せそうに目を細めていた。
「うむ… 確かに、甘くて冷たくて、美味じゃのう。わしの時代には、こんな贅沢な食べ物はなかったわい…」
長政も、マンゴーかき氷の味に感心していた。
「瑠奈、写真撮るよ~! はい、チーズ!」
ソムは、スマホを取り出し、瑠奈とマンゴーかき氷を一緒に写真に収めた。
「あ、私も! インスタにアップしよっと!」
瑠奈も、自分のスマホで写真を撮り、SNSに投稿した。
「瑠奈よ、またその小さな箱で… わしの時代には、絵師に肖像画を描いてもらうのが精一杯だったというのに…」
長政は、瑠奈たちの行動を理解できない様子だった。
「長政さん、今は令和時代よ! 写真も動画も、簡単に撮れるし、世界中の人と共有できるのよ!」
瑠奈は、長政に現代の文化を説明した。
7. 遺跡探検!長政、ガイド役を買って出るも…?
マンゴーかき氷を食べた後、一行はアユタヤ遺跡の探検を開始した。
「瑠奈よ、わしがガイドを務めよう! このアユタヤの歴史は、わしが誰よりもよく知っておる!」
長政は、張り切ってガイド役を買って出た。
「えー、長政さんの説明って、難しい言葉ばっかりで、よくわかんないんだよね…」
瑠奈は、少し不満そうに言った。
「むむ… そうか… わしの時代と、現代では言葉遣いが違うからのう…」
長政は、瑠奈の言葉に少し傷ついた様子だった。
「じゃあ、ケン、お願い!」
瑠奈は、日本語が堪能なケンにガイドを頼んだ。ケンは、遺跡の歴史や文化について、わかりやすく説明してくれた。
「なるほど… 面白いですね!」
瑠奈は、ケンの説明に熱心に耳を傾けていた。
「ふむ… わしよりも、よっぽどわかりやすい説明じゃのう…」
長政は、少し寂しそうに呟いた。
8. お土産選び!長政、現代のお土産に困惑!?
遺跡をひととおり見学した後、一行は、お土産屋さんに立ち寄った。
「わあ! かわいいお土産がいっぱい!」
瑠奈とソムは、お土産選びに夢中になっていた。
「瑠奈よ、お土産には、刀や甲冑がよかろう! 武士の魂を伝えるには、これ以上のものはない!」
長政は、瑠奈に武具を勧めた。
「えー!? ダメだよ、長政さん! そんなもの、お土産に買ったら、飛行機に乗れないよ!」
瑠奈は、長政の言葉を一蹴した。
「むむ… そうか… わしの時代には、飛行機などなかったからのう…」
長政は、現代の交通事情を改めて実感した。
瑠奈たちは、タイの伝統工芸品や、可愛い雑貨などをお土産に選んだ。
9. 寺院で…!? 長政、仏教文化に戸惑う!
アユタヤには、多くの仏教寺院がある。一行は、その中の一つ、ワット・ヤイ・チャイ・モンコンを訪れた。
「うわあ… 大きな仏塔! すごい迫力!」
瑠奈は、黄金に輝く仏塔に圧倒されていた。
「瑠奈よ、ここは神聖な場所じゃ! 敬虔な気持ちで参拝するのだ!」
長政は、瑠奈に注意した。
「はいはい… わかってるって」
瑠奈は、面倒くさそうに答えた。
「しかし… わしの時代は、仏教よりも神道が主流だったからのう… なんだか、落ち着かんわい…」
長政は、仏教寺院の雰囲気に戸惑っている様子だった。
「長政さん、仏教は、タイの人々にとって、とても大切な宗教なのよ。敬意を払いましょう」
ケンは、長政にタイの文化について説明した。
10. 最後の夜… 長政、瑠奈に感謝を伝える!
アユタヤ旅行の最後の夜、一行は、キャンピングカーの中で、夕食をとっていた。
「今回の旅行、楽しかったね!」
瑠奈は、笑顔で言った。
「ああ、わしも楽しかったぞ、瑠奈。お主のおかげで、400年以上前のアユタヤを、再び訪れることができた」
長政は、瑠奈に感謝の言葉を伝えた。
「えへへ… どういたしまして! 長政さんのアユタヤへの想いが、私にも伝わってきたよ」
瑠奈は、照れくさそうに答えた。
「瑠奈よ、わしは、お主の頭の中にいることで、現代のタイの文化や人々の暮らしを知ることができた。本当に、感謝しておる」
長政は、心からそう思っていた。
「長政さん… 私こそ、長政さんの存在に感謝してるよ。長政さんの記憶や経験は、私の人生を豊かにしてくれる。これからも、一緒にいろんなことを経験していこうね」
瑠奈は、長政に笑顔を向けた。
「ああ、そうさせてもらおう!」
長政も、瑠奈に笑顔で答えた。
こうして、瑠奈と仲間たち、そして頭の中の山田長政の、ちょっと変わったアユタヤ旅行は、幕を閉じた。
この旅を通して、瑠奈は、タイの歴史と文化への理解を深め、山田長政の魂との絆をさらに強めた。
そして、彼女は、自分の中に眠る冒険心を再確認した。
瑠奈は、これからも、長政と共に、様々な場所を訪れ、多くのことを経験していくことだろう。
それはきっと、笑いと感動、そしてちょっぴり不憫な、忘れられない旅になるに違いない。
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