第15話 タイの薬局での悲劇
バンコクの賑やかなスクンビット通りにあるアパートで、Z世代の瑠奈は、頭の中の戦国武将・山田長政、そして昭和からタイムスリップしてきた江戸っ子・亀次郎との奇妙な共同生活を送っていた。
ある日のこと、瑠奈は深刻な悩みを抱えていた。それは、ここ最近、おならが頻繁に出ること。しかも、その臭いは強烈で、周りの人に迷惑をかけてしまうのではないかと不安で仕方がなかった。
「もー、マジ最悪!なんでこんなにオナラが出るのよ!」
瑠奈は、ソファに寝転がりながら愚痴をこぼした。
『瑠奈よ、心身ともに健康であることは武士の務め。その悩み、放置しておいてはならぬぞ!』
頭の中の山田長政が、いつものように熱く語りかけてきた。
「ったく、長政はうるせえなぁ。でも、さすがにこれはマズイよね…」
瑠奈はため息をつきながら、スマホで「タイ おなら 薬」と検索してみた。すると、いくつかの薬局の広告が表示された。
「よし、薬局に行ってみよう!」
瑠奈は決意し、アパートを出ようとした。その時、亀次郎が部屋から出てきた。
「おいおい、瑠奈ちゃん、どこ行くんだい?」
亀次郎は、いつものように人懐っこい笑顔で話しかけてきた。
「ちょっと薬局に行ってくる。最近、お腹の調子が悪くてさ」
瑠奈は、少し恥ずかしそうに答えた。
「なんだい、腹の具合が悪いのかい?それなら、俺が昔よく飲んでた胃腸薬があるぜ!ほら、これだ!」
亀次郎は、懐から小さな茶色の瓶を取り出した。ラベルには「強力胃腸薬」と書かれている。
「えー、でも、それって昭和の薬でしょ?大丈夫なの?」
瑠奈は、少し不安そうに言った。
「なんだい、心配するこたぁねえよ!俺が保証するぜ!この薬、どんな腹痛も治してくれるんだ!」
亀次郎は、自信満々に胸を張った。
『待て、瑠奈!その薬は危険かもしれんぞ!わしの時代には、薬草を用いて…』
頭の中の長政が、亀次郎の言葉を遮ろうとした。
「ちょっと、二人とも、うるさい!どっちの言うことも信じられないし、もういい!自分で薬局に行って、薬剤師さんに相談するから!」
瑠奈は、二人の意見を無視して、アパートを飛び出した。
**タイの薬局にて**
瑠奈は、近くの薬局に入った。店内は、薬やサプリメントで溢れかえっていた。薬剤師の女性が、笑顔で瑠奈に近づいてきた。
「サワディーカ!何かお探しですか?」
薬剤師は、流暢な英語で話しかけてきた。
「えっと… 実は、最近おならが頻繁に出るんです。何か良い薬はありませんか?」
瑠奈は、少し恥ずかしそうに言った。
「おならですね?それは、もしかしたら便秘が原因かもしれませんね。新しい便秘薬がありますよ。とてもよく効きますよ!」
薬剤師は、自信満々に新薬を勧めてきた。
『待て、瑠奈!便秘薬は危険じゃ!昔からの方法で…』
長政が、瑠奈の頭の中で叫んだ。
「ちょっと待って!便秘薬はちょっと…他に何かありませんか?」
瑠奈は、長政の言葉に少し不安になり、薬剤師に別の薬を尋ねた。
「他に…そうですね… 昔ながらの漢方薬もありますよ。でも、効果は少し弱いかもしれません」
薬剤師は、少し残念そうに言った。
その瞬間、亀次郎の声が瑠奈の頭の中に響いた。
『おいおい、漢方薬なんて、効き目が遅くてじれったいだけじゃねえか!俺が昔飲んでた胃腸薬の方が…』
「もう、うるさい!どっちもダメ!やっぱり、新しい便秘薬をください!」
瑠奈は、二人の意見を再び無視し、薬剤師が勧める新薬を購入した。
**カフェでの悲劇**
薬局を出た瑠奈は、近くのカフェで休憩することにした。アイスコーヒーを飲みながら、購入した薬を早速服用した。
『瑠奈よ、新しい薬は注意が必要じゃぞ…』
長政が、心配そうに言った。
「大丈夫だって!薬剤師さんが勧めてくれたんだから!」
瑠奈は、長政の言葉を気にせず、アイスコーヒーを飲み干した。
しかし、それから数分後、瑠奈は異変を感じ始めた。お腹がグルグルと鳴り始め、強烈な便意に襲われたのだ。
「や、ヤバい… トイレに行かなきゃ!」
瑠奈は慌てて席を立ち、トイレへと向かった。しかし…
**トイレは使用中**
トイレの前に到着した瑠奈は、絶望に打ちひしがれた。ドアには「使用中」の赤いランプが点灯していたのだ。
「うそでしょ… まじかよ…」
瑠奈は、脂汗を流しながら、便意と闘っていた。
『瑠奈よ、我慢は良くないぞ!武士たるもの…』
「長政、今はそんなこと言ってる場合じゃない!もう限界…!」
瑠奈は、涙目になりながら、トイレのドアをノックした。
「すみません… 中の人、お願い!もう限界なんです…!」
しかし、中からは何の返事もない。
瑠奈は、もはや我慢の限界に達していた。
「もう、ダメだ…!」
瑠奈は、意を決して、ズボンのチャックを下ろした。
次の瞬間…
**轟音と共に…**
瑠奈の体内から、想像を絶する轟音が響き渡った。それは、まるで怪獣の咆哮のようだった。
カフェの客たちは、一斉に瑠奈の方を振り返った。瑠奈は、恥ずかしさと絶望で、その場に凍りついた。
「瑠奈よ… これぞまさに、武士の…いや、なんでもない…」
長政も、この状況には言葉を失っていた。
「瑠奈ちゃん… 大丈夫かい?」
亀次郎の声が、瑠奈の頭の中に優しく響いた。
瑠奈は、ゆっくりと顔を上げた。そして、カフェの客たちに向かって、深々と頭を下げた。
「… ごめんなさい…」
瑠奈の目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。
**エピローグ**
この事件以来、瑠奈は「おならの女王」という不名誉なあだ名を付けられてしまった。しかし、彼女は、この経験を通して、大切なことを学んだ。それは、自分の体と向き合うことの大切さ、そして、周りの人々に迷惑をかけないことの大切さだった。
そして、瑠奈は、もう二度と、薬局で新薬を買うことはないと心に誓ったのだった。
**注釈:**
この物語は、架空のものです。実在の人物、団体、事件とは一切関係ありません.
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