第16話 亀次郎、ユーチューバーへの道!

「おいおい、一体全体どうすりゃいいんだい!?」


瑠奈のアパートのリビングで、亀次郎は頭を抱えていた。現代にやってきたはいいものの、パスポートもワークパーミットもない。途方に暮れる亀次郎に、瑠奈も頭を抱えた。


「困ったわね…長政さん、何かいいアイディアない?」


瑠奈の問いかけに、頭の中の山田長政が答える。


「むむ…この時代では、武士の腕前は役に立たぬようじゃな。それに、あの男の不器用さでは、まともな仕事は難しいであろう…」


思わず瑠奈の口から長政の言葉が出てしまった。


瑠奈の言葉に、亀次郎はムッとした顔をする。


「なんだい、瑠奈さんよぉ。この亀次郎を誰だと思ってんだい?江戸っ子の心意気ってやつを見せてやるよ!」


「でも、具体的にどうするのよ?仕事探しだって、簡単じゃないわ」


瑠奈の言葉に、亀次郎は再び黙り込んでしまった。


その時、瑠奈はひらめいた。


「そうだ!ユーチューバーはどうかしら?」


「ユーチュー…なんだい、そりゃ?」


亀次郎は首を傾げる。瑠奈は、スマホを取り出して動画を見せながら説明を始めた。


「ほら、こうやって動画を配信して、広告収入を得たり、企業とタイアップしたりするのよ。亀次郎なら、きっと面白いコンテンツが作れるわ!」


「へぇ…面白そうじゃねえか!」


亀次郎の目が輝いた。


「長政さん、どう思う?」


瑠奈は心の中で長政に尋ねる。


「むむ…動画配信か…確かに、あの男の破天荒な言動は、見る者を惹きつけるかもしれぬ」


こうして、亀次郎のユーチューバーデビューが決まった。


サムライ昭和Zチャンネル、始動!


瑠奈は、早速チャンネルを開設した。チャンネル名は「**サムライ昭和Zチャンネル**」。亀次郎のキャラクターと、現代の若者文化を融合させた、斬新なチャンネルだ。


「よっしゃ!これで、天下獲ったも同然だぜ!」


亀次郎は、赤いふんどし一丁で、やる気満々だ。


「ちょっと待って!その格好はまずいでしょう!?」


瑠奈は慌てて亀次郎を止めようとするが、亀次郎は聞く耳を持たない。


「いいんだよ、これで!これが、この亀次郎の持ち味ってやつさ!」


瑠奈はため息をつきながら、撮影を始めた。


最初の動画は、亀次郎の自己紹介動画だ。亀次郎は、慣れないカメラの前で、たどたどしく自己紹介を始める。


「えー…どうも、亀次郎です!…って、なんだい、この四角い箱は?…あ、これがカメラってやつか!?」


亀次郎の不器用な姿に、瑠奈は思わず吹き出す。


「長政さん、見て!亀次郎、面白いわ!」


「むむ…確かに、憎めぬ不器用さじゃな…」


しかし、チャンネル登録者数はなかなか増えない。


セクシーダンスでバズる!?


「どうすれば、もっと視聴者増えるのかしら…」


瑠奈は悩んでいた。


「そうだ!セクシー路線はどうかしら?」


瑠奈は閃いた。


「亀次郎、ちょっとセクシーなダンス踊って!」


「セクシーダンス?なんだい、そりゃ?」


「ほら、こうやって…」


瑠奈は、スマホでセクシーなダンス動画を見せる。


「へぇ…面白そうじゃねえか!よっしゃ、やってやるぜ!」


亀次郎は、赤いふんどし一丁で、セクシーダンスに挑戦する。しかし、その姿は、セクシーとは程遠い、滑稽なものだった。


「もう!ダメダメ!全然セクシーじゃないわ!」


瑠奈は、呆れ顔だ。


「じゃあ、瑠奈も一緒に踊ればいいじゃないか!」


亀次郎は、瑠奈を誘う。


「えー!?私が!?でも…」


瑠奈は躊躇するが、亀次郎に押し切られる形で、渋々セクシーな衣装を着て、一緒に踊り始めた。


そして、事件は起こった。


全裸ライブ配信!?


ライブ配信中、二人はノリノリで踊りまくっていた。


「よっしゃー!盛り上がってまいりましたー!」


亀次郎は、赤いふんどしを振り回し、激しく踊り狂う。


「キャー!亀次郎、すごーい!」


瑠奈も、セクシーな衣装を翻し、挑発的なポーズを決める。


しかし、二人の動きは激しすぎた。踊り続けるうちに、亀次郎のふんどしが…そして、瑠奈の衣装も…


「え…?ちょっ…」


二人は、一瞬何が起こったのか理解できなかった。


「キャーーー!!」


視聴者からの悲鳴が、コメント欄に殺到する。


瑠奈は慌てて配信を停止した。


「やばい…どうしよう…」


瑠奈は顔面蒼白だ。


「へへっ…なかなか面白かったろ?」


亀次郎は、悪びれる様子もなく、ニヤニヤしている。


不憫かわいいチャンネルとしてバズる!


翌日、瑠奈は恐る恐るネットの反応を確認した。


すると…


「サムライ昭和Zチャンネル」が、**「不憫かわいい」**チャンネルとして、バズっていたのだ!


「ええっ!?マジで!?」


瑠奈は目を丸くする。


コメント欄には、


「あのハプニング、最高だった!」

「二人とも、不憫だけど、なんかかわいい!」

「応援したくなっちゃう!」


といったコメントが、殺到していた。


「長政さん、見て!私たち、バズってるわ!」


瑠奈は、興奮気味に長政に報告する。


「むむ…予想外の展開じゃな…」


長政も、驚きを隠せない。


こうして、「サムライ昭和Zチャンネル」は、**不憫かわいい**チャンネルとして、人気ユーチューバーの仲間入りを果たしたのだった。

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